2018. 03. 23  
「じゃあ、ぼく、ちょっと走って取ってきます」

「え?いいんですか?」という、営業課長の声も聞かぬままディーラーを飛び出した小僧に突き刺さるのは刃のような豪雨でした。

「かっこよく飛び出した手前、戻るなんてできねえよ。
後悔しても時間は戻らなねえからよ。
負けっぱなしの人生でも、倒れるときは前のめりだ!」


にやりと笑いながら、かっこいいのかよくないのかよくわからない台詞を吐き出し、豪雨の中を走りだしました。

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6回表 オイルショック~5380km~



FITを購入してまだ4か月も経っていませんが、走行距離がもう5000kmを越えてしまいました。
東京ディズニーランドが1周3kmですので、デズランを1666周している計算になります。

「5000kmを越えたら車のエンジンオイルを交換しよう」という、都市伝説?を信じたぼくは、FITを購入したディーラー店に足を運びました。

店に来店、営業マンからの案内、店内のテーブルに着席、
「今から、点検とオイル交換を兼ねた作業を行いますので、少々お待ちください」と営業マンからの言葉にうなづいた後、無料サービスのドリンクに手を伸ばす、ここまでがディーラーでのルーティンワークをこなします。

無料ドリンクサービスは、COOPなどに置いてあるスタンダートな自販機ですが、お金を入れなくてもドリンクが注がれるという代物です。
「なんて最高な機械だ!」と思い、盗んで家に持って帰れないものかと画策したものの、総重量が1トンくらいはありそうですので諦めます。

転勤先の鳥取ではカフェの常連のぼくは、ここでもコーヒーを飲むのか、とおもいきや
親指が狙ったボタンは、「いちごオレ」

24歳の塩顔が、ピンク色のあまたあ~い飲み物を幸せそうな顔でグビグビ飲んでいると、先ほどの営業マンが目の前の椅子に腰掛けました。

「お客様。」

顔が近い。
とっさに、びびったぼくは、背筋を伸ばして、名札に力石と書かれた若い営業マンから距離を置きます。

しかし、よく彼の顔を見ると、ミッキーマウスのようなくりっとした目をしているではありませんか。
都市は、ぼくと同じ24歳くらいでしょうか。
少々ベトベト気味のワックスと柄がお派手なメガネがトレードマークです。

そんなリッキーは、一枚の紙をテーブルに提示して説明を始めました。

「エンジンオイルなのですが、こちらのパックをご利用いただきますと、お値段がお安くなります」

彼が紹介したきたのは、10Lと20Lのエンジンオイルのセット商品でした。
通常は10L、12000円、20Lは24000円ほど、するのですが、まとめて購入すると、約半額になるというのです。特に20Lの割引率は大きく、かなりお安くなっているのです。

「ほう。こいつは安いですね。けど有効期間が2年となっていますね。
2年では、20Lは使いませんわ。」

「いえ、お客様。有効期限は、来店するたびに更新されます」

「更新?ということは、次に来店したらその時から2年ですか?」

「そ、そうですね」
ここでのリッキーの返答が少しどもっていたことにぼくは気づきませんでした。

「ほう、てことは、こまめに来店したら、有効期間なんてあってないようなもんですね」

「…」リッキーは何も答えませんでしたが、ぼくは、「このキャンペーンの20Lでお願いします」と彼に言ったのです。

そして、20Lのエンジンオイル代金11448円をクレジットカードで支払ったのです。

その後、総走行距離5380km、エンジンオイル3.1L補充の領収書を受け取り、上機嫌のまま自宅に帰りました。


「親父、エンジンオイル20Lで12000円弱って安いよな?」
車のことなら、親父と頭にインプットされているぼくは、父に質問を投げかけます。

「確かに安いけど、20Lも使うほど走行するんか?」

「まあ、3年あれば走るやろ。20Lの有効期限もないみたいもんやからな」

「有効期限がない?お前、そのキャンペーン、だれに紹介されたんや?」

「リッキー」

「誰や」

「力石っていう若手や」

「ああ、お前それあかんわ。
あの店は、購入時に担当してくれたあの営業課長以外はへぼいぞ。その有効期限の話も怪しい」

父の話を聞いて不安になったぼくは、ディーラーに電話を掛けました。
そして、信頼感抜群の営業課長に電話をつないでもらいます。

「エンジンオイルの有効期限についてなんですけれども…」

営業課長からの返事は、有効期限が更新されることはない、20Lから10Lに変更するなら、再度来店してほしいと言われたのです。

ぼくは、電話を切ると、「リッキィー…」と呟きます。

「まあ、でも20Lのエンジンオイルを2年間で使えばええんやろ?
今、鳥取から帰省しまくってるし、このペースならあっという間やろ。来週も帰省するし」

「は?お前、来週も帰るんか?てか帰省しすぎやろ。何考えてるねん」
息子が実家に帰るとくれば喜んでくれるのが親と思いがちですが、あまりに頻繁に帰りすぎて邪険にされる近頃の息子。
しかし、このペースで帰省するなら、20Lのままでもいいと思い始めたぼくに、父は質問を投げかけました。

「来週はなんで帰ってくるんや?」

「0.02%を掴み取るためや」

0.02%のことには触れずに、父は核心的な言葉をぶつけます。
「お前さ。何が何でも関西に帰りたいから転職するって言うてたやん?
関西に帰ってきたら、走行距離も大きく減るやろ。20Lどころか、10Lのオイルも…」

「っあ!!!鳥取に2年間も住むつもりでおったけど、転職を忘れてた!!!」

ぼくは、そう叫ぶとすぐさま、自宅をあとにし、再度ディーラーに向かったのです。

リッキーに騙された苛立ちのままFITに乗り込み、小学校のころからのお決まりの路地を通って大通りへ向かいます。
しかし、そこは一方通行の道路、車でここを通っているぼくは逆走状態です。

「俺が今、乗ってるのは自転車じゃない。車や。」
その圧倒的事実に気づいた時にはもう手遅れで、目の前から、3ナンバーの車がやってきたのです。

急いで、Rにレバーをいれて、バックで逃げて、なんとか方向修正しましたが、ひやひやしたイベントでした。


やっとのことで、ディーラーに到着したぼくを出迎えたのは、再びリッキーでした。

4年前のぼくなら、「あなた言ってたこと違うでしょ?」と、彼につっかかっていたかもしれません。

しかし、社会人になって理不尽に晒され続けた塩顔は、「不毛な言い争いになるのなら、怒りは胸の中に押しとどめる」という戦術を身に着け始めたのです。
そして、ぐわっと目を見開いて、リッキーに白い歯を見せました。

そして、リッキーではなく、営業課長に話しかけたぼくは、クレジットカードを渡して、20Lから10Lに変更してもらうように依頼しました。

「お客様…納品書はありませんか??」
ぼくが納品書を家に置いてきた旨を伝えると、営業課長かはまさかの提案をしてきたのです。

「そうですか。納品書も必要でして…
しかしお客様に再度、お持ち帰りいただくのは、申し訳ありませんので、お客様がお帰りになるときに私も家までお供いたします」

「お供?」
ぼくは思わず、聞き返しました。

つまり、営業課長は、ぼくの自宅までついてきてくれるというのですが20歳以上年上の敏腕営業マンにそんなことさせるわけにはいきません。
さらに、営業課長にはFITを大幅値引きしていただいた御恩があるのです。

このとき、当の原因リッキーは、横で、申し訳なさそうな顔をしてアワアワしていました。


そこからのぼくの判断は迅速でした。
「いえ、営業課長さんに悪いんで、じゃあ、ぼく、ちょっと走って取ってきます」

「え?いいんですか?」という、営業課長の声も聞かぬままディーラーを飛び出した小僧に突き刺さるのは刃のような豪雨でした。

「かっこよく飛び出した手前、戻るなんてできねえよ。
悔しても時間は戻らなねえからよ。負けっぱなしの人生でもよぉ、倒れるときは前のめりだ!」

にやりと笑いながら、かっこいいのかよくないのかよくわからない台詞を吐き出し、豪雨の中を走りだしました。

土砂降りの雨の中、拳を握りしめて走り出る小僧は、悔しさを抱えてひたすら進みました。

「リッキーのせいにしてたけど、あいつの言葉を信じた俺も悪いじゃねえか。
全てそうや。今のこの人生の現実も。俺が弱ぇからだ。
人生を思い通りにする力が欲しい。金と、筋肉と、知識と、知恵と、仕事と…」

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少年漫画の主人公のようなセリフを、胸のうちに抱いていますが、その顔面は鼻水と涙が雨に混じってびしょしょのくしゃくしゃでした。

ダッダッダ
怒りを込めて、走っている中、ふと、「あっ、けど、俺、新車のFITだけは持ってる」という光に気づいたのです。

俺は負け犬じゃない、FITさえあれば、大逆転を起こせる!
ていうかFITカッコよすぎじゃね?
FITを開発した会社天才ちゃう??
本田宗一郎には感謝感謝。

ぼくの心の中は、自分の負け犬根性からFIT、そしてホンダ崇拝に変わって言ったのです。

びしょ濡れで自宅に戻ったぼくに母は尋ねました。
「あんたなんで濡れてるん?ていうか家の駐車場に車ないやん」」

母に、説明することが煩わしいと思ったぼくは、たった一言、「FIT最高」と呟き、納品書を掴むと、また豪雨の中走り出したのです。


そして、本日3度目のディーラーへの来店。

その場に現れることのないリッキーに変わり、営業課長は必死にぼくに謝ってくれました。
「間違えた情報をお伝えしてしまい申し訳ございませんでした」

ぼくは、肩で息をしながら、「大丈夫っすよ。ぼくも尋ね方も悪かったんで」と答えます。

白く曇るメガネの前に映った、部下のミスを謝罪する営業課長の姿をみて、ぼくのリッキーへの怒りはとうに消えていました。

営業の仕事って大変やな、そう思って店をでると、東の空には虹がかかっていました。

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読んでいただきありがとうございました。

来週3月30日(金)は、
俺たちバグジー親衛隊 Ⅳ章
PART25 チャリで有馬(1)~冒険は突然に~

を掲載いたします。

「チャリで有馬」シリーズは、Ⅳ章のクライマックスとなるドタバタ冒険譚です。
4~5週ほど続く予定ですので、よろしくお願いします!

よければ別の記事もご覧ください!

←【目次】俺たちバグジー親衛隊
 おバカ高校生たちの青春ラブコメ小説!

おすすめの話はこちらです!
→Ⅰ章4話、   →Ⅲ章11話→23話→29話   →Ⅳ章1話 


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2018. 01. 10  
ウィンギュイーン…ガガガ…ウィンギュイーン…ガ・ガガガ…

か弱く細い細いワイパーは、悲鳴にも似た音を鳴り響かせながら、どっさりと降り積もった雪をどかしています。



2018.1.10
今朝も寒さに負けずサボテンに水やり、家庭菜園の鬼こと課長は僕に声をかけました。

「今日は雪がたっくさん積もるから早く帰った方がいいお~」

内心、`か、課長!俺がどんだけ仕事溜まっているか知ってるでしょ?`と思いながらも、あだち充漫画の主人公気取りで返事をします。

「ウェース」


全員が帰った30分後の17時45分。外を見渡すと、職場周辺は白銀の世界です。

「わ~い!雪だ!」
なんて、ことはまるでありません。

車汚れるやん、運転しづらいやん、と眉を曇らした僕は、
「仕事は明日でもできる。今日は無事家に帰ろう」と自分に言い聞かせて、愛車のFITに飛び乗るため、外に出ました。

ビシャビシャブシャ!

地面から嫌な音がしたので、下を見ると、もう靴はびしょ濡れ。
湿った雪は地面を水浸しにしていたのです。

ああ、やらかしたと思うよりも先にロッカールームへ向かい、職場の長靴に履き替えます。
まるで自分の所持品のように履きましたが、これは職場の備品です。

「緊急事態。緊急事態。緊急事態」
「明日返す。明日返す。明日返す」


三度心の中で唱えてから再度外に飛び出ます。

時を駆ける少女のように、足を大きく広げてジャンプ!
なんてことはせず、ゆっくりゆったり歩みを進めました。

やはり、ビシャビシャブシャ!となりますが、長靴の威力で水を弾き飛ばします。
「ざまあみろ~」

見えない敵を一人撃破した僕は、FITを駆って帰路につこうとしますが、車は雪まみれで、すぐには動かすことができません。

 米子豪雪 (1)


さすまたもどきの棒で、車についた雪をあらかた払い落した後、やっと車を発進させました。

雪道運転は初めてなので、もちろん速度を落として慎重に進みます。
普段は、ほんの少し、ほんのすこ~しバカにしている中古の軽自動車にもぬかされるという屈辱も耐え忍びながらの鈍行運転。

その鈍行運転も、1分と持たず、スピードを少し上げました。
3分ほど50㎞の速度で、国道431号線を走ります。

しかし、前の車が詰まっているのが見えたので、僕はぐぐぐっとブレーキを踏みこみました。

そのときです。

ドッサァー!

ブレーキの反動で、車の上に溜まっていた雪がフロントガラスにどっさりと雪が落ちて来たのです。

そして目の前が、真っ白になります。
まるで、手持ちポケモンすべてが戦闘不能になったかのように。

渋滞の只中とはいえ、国道で車から降りるわけにもいかず、僕は苦渋の決断で、ワイパーレバーを動かしました。

ウィンギュイーン…ガガガ…ウィンギュイーン…ガ・ガガガ…

か弱く細い細いワイパーは、悲鳴にも似た音を鳴り響かせながら、どっさりと降り積もった雪をどかしています。

「ごめんな。ワイパー。ほんまごめん
俺がもっと車の上の雪も落としておけばよかったのにな。
さむかってん。さむかったから、上の雪はほったらかした。明日は気を付ける」

独り言のように話しかける僕の声を聴いたワイパーは、
ウィーギューン…ガガガ…ウィギュイーン…ガガガ…

と、言いながら、みるみるうちに雪をどかしていきました。


視界が開けたおかげで、運転を再開できた僕は、雪道が原因の渋滞に多少のイラつきを覚えながらも、無事、目的地のスーパーマーケットまるごうに到着しました。

地方スーパーといえど、雪国ですので、駐車場は除雪済み。
なんてことはまるでなく、駐車場は雪地獄、まるでゲレンデです。
こんなことなら、スキーボード持って来ればよかった、スノーボードはできませんが...

 米子豪雪 (2)


白線も全く見えないので、とりあえず適当に端っこに止めた後、車から出ます。

ビチャ。

嫌な音が足元からしましたが、ベトベトは長靴がはじいてくれるので気にしません。
僕は不気味な笑みを浮かべて、スーパーの入り口まで走り始めました。

ベッチャベッチャベッチャと、雪をはじく長靴。
「この長靴めっちゃええやん。ええの買ったなあ~」

僕は、長靴が職場の備品と言うことを失念していましたが、地面から跳ね返った雪がスーツをべちょべちょにしている事実も失念しています。
身も心もベトベトとはこのことです。


僕はこのとき、`今日の豪雪の中、スポーツジムのシックスパックという腹筋を割るプログラムに参加するかを否かを本気出して考えていた課長の言葉を思い出します。
「食品は買いだめしてたほうがいいお~。
去年の豪雪の時は、トラック来れなくて品薄だお~」

一目散に保存食売場に行き、保存食の代表格ともいえるラーメンを手に取ります。

「まあ、一応、賞味期限も確認しとこうか。
なになに?

2017.12.22」

僕は、二度の網膜剥離でズタボロになっている目を血走らせたあと、そのラーメンを棚の奥の奥へと封印しました。
隣の棚のラーメンたちは、良い子ちゃんだらけで、賞味期限は2018年以降。
安心してそれらを購入しました。

お好み焼きや、ハンバーグなど、いかにもTHE冷凍食品という冷凍食品もカゴに入れた後は、今日の晩御飯を探してお惣菜売場へ向かいます。

「牛すき焼き重…398。これがさらに半額?」
「天津飯。402円。これもさらに半額!?」


「こ、こいつら、儲けを度外視してる!!?」


消費期限切れの食材たちは、18時半という時間には、全て半額シールを張られてしまうのです。
たった3時間前にはできたてほやほやのエース食材たちが、今やこのざま。


2000本安打もうすぐなんですから、どこか拾ってあげてくださいよと、世間から思われながら、未だにどの球団からのご指名がない元巨人・村田選手も、いっそのこと体に`半額シール`を貼ってみたらどうでしょうか

畠山をこよなく愛する球団あたりが、飛びついてくれるかもしれません。

目の前に飛び込んできた激安商品たちに度肝を抜かれながらも、僕は正気を取り戻し、牛すき焼き重398、鳥スティック108円、まいたけてんぷら138円、という選りすぐりの3匹を半額で購入しました。

てんぷら、という名称に惹かれたものの、所詮はキノコの友達のまいたけに138円。
しかし、値段設定が絶妙に良いのです。さらに半額なので殆どタダです。


カゴいっぱいの食品を持ち、両腕に大量の重さを感じながら、豪雪と言う名の籠城戦を戦う覚悟を決めた僕は、レジへと向かいました。

しかし、ガツガツという足元からの音が妙に気になります。

「うるせえな…
あ。俺の長靴の音か」


買い物のおばちゃんたちは、スーツ姿で長靴を履いたひょろ長い塩顔に注目、するでもなく、せかせかと各々のカゴに食材を詰め込みます。


やっとレジに商品を提示した僕は、緊張の面持ちで金額精算を見守ります。

「こんなに大量に買ってんから、5万円はするやろう」
と思っていたからか、レジのおばちゃんが言い放った

「2723円です~」というセリフには思わず叫んでしまいます。

「え?!」

思わず、おばちゃんも
「え?!」

1秒間。時が止まります。
そう、リトルタイムストップ。

「もっと払うで?先々月の合コンの一次会より安いっておかしいやん!?」
しかも、袋に包んでくれる~!
昨日行ったイオンのスーパーは袋に包んでくれんかったのに、ここは包み込んでくれるてる!」

そんな思いを胸にしまって口には出さず、僕はカッコをつけて、「カードで」と、告げてから支払いを済ませました。

クレジットカードを使うのがかっこいいのではなくて、現在一か八かに賭けて、80万円も株式に突っ込んでいる無茶な小僧は現金がないのです。

新車の借金返済のためには、どっとリスクを負ってしまうあたりが、未だ結婚できそうな予感すらしない理由かもしれません。
しかし、僕の考えとしては、仕事柄送りバントを決めているんやから、プライベートは攻めていきたいのです。

まあ、万一結婚できたらびっくりするぐらい送りバント思考に変わると思いますが。


その後、雪道の中FITを駆って社宅まで帰りますが、ここでも問題が起こります。

雪が降り積もった結果、白線が消えてしまっており、駐車場所がわからないのです。

 米子豪雪 (3)

「どこ止めりゃええねん」とささやきシローしながら、駐車場に降り積もった新雪の上を進みます。

ムごごごごご…

という音を立てた後、動かなくなったFITですが、アクセルを踏み込むと、しっかり動きだしたので、適当な場所に、適当に駐車することに成功します。
雪なんかにまける僕のFITではありません。

もし事故ってしまったとしても、FITは責めません。僕の運転テクニックがべらぼーに悪いのです。

適当な場所に止めてしまったので、他の車の駐車場所を奪ってしまったかもしれませんが、他の車も適当に止めることが予想されるので問題はありません。


明日の朝に備えて防雪シートをフロントガラスに敷こうと作業を始めましたが、なかなかうまくいきません。

かじかむ手先、目の中に入る雪、奪われる体温。
容赦なく降り積もる雪に、山積みのままの仕事。

そして「なぜ俺は鳥取県のこんな極寒の中で生きているんだ」というシンプルな疑問。

……………..

「はっはっ…
はっはっはっはっはー!!」

突然笑い始める24歳の半D小僧。

僕はもともと2本ほど外れているネジが、もう一本抜けたかのように一人で笑い始めていたのです。

着任した時点で仕事は溜まっていた、前任が悪い、という言い訳。
係長ポストに新人配置してんじゃねえ、せめて給料上げろ、という愚痴。
元カノが結婚しそうやからって半泣きになってんじゃねえ、という怒り。
親友の結婚報告ぐらい嫉妬せずに心から喜んでやれよ、という切望。

9回ツーアウトまで追い込まれた、何も持たざる情けない自分の現状を笑うしかなくなっていたのです。

「はっは、はっはっはー!」

降りしきる豪雪を体に受けながら、不敵な笑いを続けたあと、僕の心には岩礁から湧き上ったかのような、諦めにも似た決意が存在していました。

そして、「面白くなってきやがった」と、少年漫画の主人公みたく吐き捨てると、夜の暗闇に消えていきました…


この他にも、電子レンジでチンしすぎて、ちょっと火傷したり、一人部屋の片隅でリンダリンダを弾き語ったり、どうでもいい話は尽きないのですが、今日はこの辺で。

*この物語はフィクションです。
実際の人物にはほんの少ししか関係がありません。



≪あとがき≫
読んでいただきありがとうございました。
お気づきになったかたもいるかと思いますが、タイトルの「スノースマイル」はBUMP OF CHICKENの曲名から借りました。

切ない名曲ですね。
♪ほら夢物語叶う前だって笑顔は君がくれる そんなのわかってる♪

寒くなってきましたが皆様も体調に気をつけてください。



読んでいただきありがとうございました。
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2017. 08. 13  
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阪神尼崎駅からヤンキー風の男が乗ってきた。

金髪の髪、白のTシャツの上に羽織る薄水色のジージャン。
片方の膝だけ破れている黒のズボンに、コンバースの黒靴。

友人の発言「コンバースの黒靴履いてるやつは全員もれなくダサい」を思い出して俺は吹き出しそうになる。

そんなヤンキー風の男は、Tシャツの下にチラッと見える3つの鍵をジャラジャラいわせながら歩いてきた。
家の鍵と、彼女の家の鍵と、あと一つは...?

後ろから付いてきたのは、ジージャンを羽織った茶髪の西野カナ風女子。
ジージャンには手を通さず、羽織っているだけだ。

ワンピースのクロコダイルかよ。心でそう突っ込む。

「このカップルは絶対おもろい。」
俺は即座に判断し、観察を始めた。

このカップルは、俺の隣の席に女子が座り、男はその前につっ立った。

「へいっへいへいっおらぁー」

わけのわからないテンションで言葉を発しながら、男は座っている女子に自分の大量の荷物を持たせる。

荷物を押し付けられた女子は、手に持っていた傘で男の足を突いた。

槍部隊か?

「うわっ、穴空いた!」

元々そのズボンには穴が空いていたのだが、男はそう叫んだ。

「うふふふふっ」
槍使いの女子は、そんな男の様子を見て、サザエさんのように笑っている。

「へっへー、すんません」
会話の雰囲気を見ていると、男が後輩のようであり、一応敬語を使っている。

「晴れてきたね。」
外の天気を見て語りかける女子に対して、男は自信満々に話し始めた。

「晴れてきたっさすが俺!鬼晴れやん!
天気覆すからな、俺!」


「ほんとだー。すごいねー」
男の超能力者発言に突っ込みもせず、ゆっくり頷く女子。

男は気をよくしたのか、言葉が止まらない。晴れ間が見えてきた空を指差しながら、喋り続ける。

「ほらっ!ほらっ!晴れてる!
へっへっへっ!
俺すっげえわぁ!」

男のズボンの隅からは相変わらずジャラジャラと銀の鍵が3つ垂れ下がっている。
まほうの鍵と、最後の鍵と...?


俺はこの男をじっとみつめて、分析している。

鬼晴れ?
晴れに鬼とかあるんか?

天気を覆す?
そんなことできるんか?

そもそもこいつは本気で晴れたのが自分のおかげやと思っているんか?

しかし、彼を分析をしても無駄なことに気付く。
イケイケDQNの行動言動に意味はないのだろう。

「ねぇねぇ?オリンピックして?」女子は猫なで声で男に語りかける。

オリンピックという表現がわからなかったが、電車のつり革を掴んでいた男の顔のにやつき具合で全てを察した。

こ、こいつは体操選手になるつもりだ。

「やりましょか?オラオラァ!」
ジョジョの見すぎなのか、オラオラと言いながら、つり革で懸垂を始める男。

「やめてやめて」と言って止める女子。

お前がやらせたんやろうが。

男は渋々止めるが、まさかのワル自慢を始める。

「神鉄とかではバリバリやりますよ!
ぶぅわぁーやって、この荷台の上に、寝転んでガァッーやったりますよ!」


擬態語が多すぎてよくわからないが、DQNの行動は読めた。

「そうなんやー、すごいねー」と、言って感心している女子もどうかと思うが。

神鉄ユーザーの俺としては、この男がつり革で体操選手になってることが辛かった。

しかし、この男のことは他人事には思えない。
彼を見ていると、俺にもこんな時期はあったことを反省する...

さすがにこの男ほどではなかったが...

男が急に口ずさみ始めた歌は、ドリカム 大阪LOVER
♪何度恋をしてたってー大阪弁は上手にならへんしー♪

バリバリの三代目ジェイソールブラザーズみたいな雰囲気の男が歌うドリカムは破壊力抜群だ。

サチモスが好きなタイプが歌うドリカム顔もなかなかいい。

次に男は、自分の定期券を見せて語りかけた。
「この阪神の定期券は、ウメダって表記されてっけど、阪急電車はウメヅなんすよっ」

「そうなんだー。」あまり興味なさそうに答える女子。

「これ見てください」男は強引に定期券を見せる。

「ああ、ほんとだー」さっきよりは驚く女子。

「どうすかこの発見?」

「へえへえへえへぇ。4へぇだね。」

「いや、5は、いったっしょ!」

彼らの観察を終えた俺は、頭が真っ白になった。

俺の振られた元カノは今、年下イケイケ系のイケメンと付き合ってるらしいけどあんな感じなんか…?
そうか、今は、年下のマイルドヤンキーがモテるのか。
そして、俺は決意した。
明日から、チャラくなろう。

まず、手始めに、片方の膝だけ破れている黒のズボンに、コンバースの黒靴を買おう。
そして、ドンキホーテで、チェーンつきの鍵を3つ買えば、完璧だ...?/strong>



読んでいただきありがとうございました。
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2017. 07. 30  
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「11時40分に梅田着く!リムジンバスで関空行こ!」

10時30分、相棒から上記ラインが来ましたが、「おれ、ギリギリになるから先行っといてくれ!」そう返信したぼくが梅田に着いたのは12時半過ぎでした。

そして、12時40分過ぎに新阪急ホテルの空港バス乗り場に着きます。

関西空港から飛行機が出発する時間は、14時50分。

「13時のリムジンバスに乗れば、
14:01に関西空港の第二ターミナルに着くからな、25分前のチェックインにはヨユーで間に合うやろ」

この時のぼくは、まさかあんなことになるなんて思いもしませんでした。

12時55分、相棒から電話がきたのでぼくは応答します。

「おう、もうバス乗ったん?」

「まだやで、バス乗り場」

「まだなんや?俺もバス乗り場やで。どこおるん?」

「後ろにおるで」

そう言って彼はぼくの真後ろから、ひょいと突然現れました。
リアルメリーさんの羊とはこのことです。

金曜日の昼間、有給消化コンビの珍道中の始まりです。

ぼくは彼に言います。
「先行ってくれたらよかったのに、すまんな待ってもらって」

「ええで、髪切ってたから」

この返答にぼくは度肝を抜かれます。

たしかに、髪の毛はやけにかっちょええ...
しかし、リムジンバスの待ち時間に散髪に行くとは、時間の使い方がうますぎやろ!?

そんなこんなしている間に13時発のバス会社到着しました。ゾロゾロ乗って行く乗客たちですが、ぼくらが乗る直前に、案内のおじさんが腕を振って言い放ちました。

「はーい、ここより後ろの方は次のバスに乗ってくださーい」

「次?次??いや、次はギリギリなってまうで、これに乗っけてよ」

ぼくは焦りますが、危機感が足りなかったのか、
「まあギリギリ間に合うかならええか」と引き下がってしまいます。

そして、次の13時20分発のバスを待ったのですか時刻を過ぎてもバスが全くきません。

「ただいま、バスの到着が遅れておりまーす」
緊張感のないアナウンスに、ぼくらの焦りも緩和されてしまいます。

「おいおい、もしかしたら、飛行機間に合わへんのちゃう?」

「せやな!」


✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈


結局バスは、20分も遅延し、13時40分ごろに梅田を出発したのです。

peachの飛行機は出発の25分前には空港でチェックインをすませないといけません。
しかし、バスが20分遅延したことにより、チェックイン時間に間に合う可能性はゼロになりました。

「絶対間に合わんやろ??」

「せやな」

「けどさ、ワンチャンに賭けてみいひん?」

飛行機に乗り遅れる時にこんなに明るい奴らも珍しいでしょう。緊張感なさ!

「もし乗れんかったらどうする?」

「神戸空港からスカイマークの仙台行きに乗るか」

「関空から神戸空港って何分で着くん?バスじゃ遠いやろ?」

「大丈夫や、水上ジェット船がある。なんと、約40分で着く」

(*7月26日に事故を起こした高速船ベイ・シャトルです)


「チッケェ!!」

「でも水上ジェットは、便数少ないなあ。
神戸空港からの飛行機の出発時間にギリギリやん」

「これさ。神戸空港行って、神戸空港でも遅れたらどうするよ?」

「そうなったら伊丹空港に行こうぜ!」

「1日で近畿圏内の三空港制覇するとかおもろすぎやろ!!」

飛行機遅延という大事件をワクワクに変えてしまうぼくらは、やっと関西空港の第二ターミナルに到着しました。

バスから降りて、peachの受付に行ってリムジンバスが遅延したという事情を説明します。

peachの方の対応はとても丁寧で、2160円を支払えば翌朝の仙台行きの飛行機に振替えてくれると言うのです。

2160円?!めっちゃ安い!と思いつつも、ぼくは無茶な要求を出します。

「それでも嬉しいんすけど、今日の成田行きの便とかに乗っけてくれませんかねー?」
仏のpeach職員でもさすがに、それの要求にはNGがでましたが...


✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈✈


明日の朝の飛行機という提案にぼくらは考え込みます。

「明日の朝か?
けどせっかく今日有給とったのに、明日出発やったら意味ない、なんとか今日行きたいなあ」

「やっぱ、神戸空港行こか、」

「いや、わかった。神戸空港行って、遅れたら明日の朝の関空発に乗ろう!」

「は?それって二回もチャンスがあるってことかよ!得すぎやん!」

「せやろ?最高の作戦や!」

そして、神戸空港に向かいますが、神戸空港からの便に乗れなかったらpeachの飛行機に振り替える、というややこしい事情をpeachの職員さんに伝えました。

もちろん、仏peachは笑顔で快諾。
そして、バス会社の事務所に向かいます。
peachの飛行機を振り替えるためには遅延証明書をもらって提出しないといけないのです。

バス会社に遅延した旨を伝えると、ぶっきらぼうな事務員が、黄ばんだヨレヨレのザラシに印刷された遅延証明書を渡してきました。

バス遅延証明書!

あまりのしわしわさに驚きつつも、ぼくらは遅延への不満を伝えます。

「空港リムジンバスが遅れて関空発の飛行機に乗れませんでした。

だから、今から神戸空港発の飛行機に乗るつもりなんですが、
せめて神戸空港までのバスの切符は、無料配布してくれるとかはないんですか?」

すると、ぶっきらぼうな事務員は、無機質に答えます。
「バスと飛行機は連動してませんので、遅延証明書しか出せません」

リムジンバスを運営する大阪空港交通、関西空港交通は、まるで遅れたことなど悪いと全く思っていないような態度です。

「空港行きのバスが、飛行機と関係していないってどういうこっちゃねん!」怒りを胸にしまいます。

せめて、大阪駅の乗り場で、「遅延しておりますので、お急ぎの方は電車にお乗りください」などのアナウンスがあってもよかったのではないでしょうか。

あくまでも、バス会社の利益しか考えていないその態度、どうなのでしょう。
たしかに、ぼくらの態度は軽いですが、飛行機に遅れるという重大事態に遭遇した若者に同情の一つでもしてくれてええんとちゃいまっか!?

ぼくらはバス会社に失望して、神戸空港へのリムジンバスに乗り込みました。

わざわざ神戸空港に行かずとも、明日の振り替え便で仙台にいけばいいのですが、「なんとしても今日仙台に行こう!」と、なぜかムキになってしまっていたのです。

あの黄ばんだ遅延証明書を見るたびに悔しさがこみ上げます。
「ここで、あきらめたら、あのバス会社の事務員の思うつぼや」

*大前提、そもそも、もっと早くバスに乗ればよかったという事実を棚に上げるあたりがゆとり世代の傲慢さです(笑)

リムジンバスが第二ターミナルから出発して、第1ターミナルに到着した時にぼくらは我に帰ります。

「ちょっと待とうや。急いで仙台行ってどないするん?」

「コボスタで楽天戦みるやん」

「それさ、明日でよくね?」

「...」

「ここから神戸空港まで行くのに2000円、飛行機代が23000円。さらにそれで、間に合う保証もない。また遅れるかもしれん」

「けど、ここであきらめたら、バス会社の...」

「バス会社にとって俺らなんて眼中にないぞ???」

「あっっ!!!」

リスキーすぎる神戸空港へのアタックに気づいたぼくらは、慌ててバスから駆け下りて、ドトールで会議。
そして、冷静になってだした結論は、本日は泉佐野で一泊、明日朝一の飛行機で仙台へ。

その晩、ぼくらは飛行機に遅れたころなんて忘れて、楽しくお酒を呑んでいましたとさ。




【今回の教訓】

今回のミスから、次回の旅行に活かせる教訓をまとめようと思います。

☆飛行機は絶対に送れない
基本中の基本です(笑)
飛行機だけは何としても遅れないようにしましょう!
振り替え便がないときや、帰路の時に遅れたら最悪です。余裕を持って空港に向かいましょう。

○リムジンバスは想像以上に混んでいるということを想定に入れる。
リムジンバスは速い。そう思っていました。しかし、昨今の外国人観光客増加により、リムジンバスの利用者数は大幅に増加しています。
乗るつもりのバスが定員オーバーで乗れないこともあります。
バスよりも、電車などの公共交通機関の方が遅延の心配はないと思います。

○乗り遅れても焦らない
 関空で乗り遅れて慌てて、神戸空港に向かうというのが、最も誤った選択でした。もし、神戸空港から飛行機に乗ったとしても、関空からの振り替え便との、到着時間の差は僅かでした。その僅かの到着時間の差に25000円ほどかける意味は薄かったでしょう。
旅行終わったあとに、待っておけばよかったなあ、と思うはずです。
乗り遅れないのが一番ですが、乗り遅れてしまった場合でも冷静に事後対応を考えることが大切だと思います。

ぼくたちの失敗がみなさまの教訓になれば幸いです。



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2016. 09. 09  
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「お前、まだポケモンGO入れとん?

幼稚やなー。消せ消せ。」

片手間にパズドラをプレイし、人に幼稚と言う割には自分が幼稚な顔つきをした短髪くりくり天然パーマは、胸毛までは見せない灰色のVネックシャツと50年前の勇者様が着てそうな紺の布切れを羽織った友人の携帯を覗き込んで言い放った。

友人は、所々が無駄に破けている白色の七分丈綿パンに手を突っ込み、顔を真っ赤にしながら、苦し紛れの言い訳をする。

「やってないわ。一応置いてるだけ。」

友人は言い訳を言い終わるや否や、苦虫をすりつぶしたような顔で、ポケモンGOのアプリを抑えつけた。

彼の手は小刻みに振動している。
まるでポケモンGOを消したくないのと主張しているかのように...

ポケモンGOのアプリが恋愛中の西野カナを超える勢いで、ブルブル震え始めたのもつかの間、男の手は目にも留まらぬ速さでバツボタンをタップしていた。

白綿パンの男の携帯からポケモンGOが跡形もなく消え去った瞬間だった。

「ふっ」
余りに潔い消去の割に、消した本人は顔面蒼白になっていたのを見た私は、つい吹き出ししまった。

焚きつけた天パと白綿パンは、突然隣に現れた、'急に笑う男'の存在を訝しく思い、ジロジロと私を見つめた。

細い目をさらに細め、何もなかったかのようにケロッとした憎たらしい表情を浮かべた私は、携帯を取り出し、あのアプリを起動した。

「ポケモンGO幼稚やな。消せ消せ。」
そう言って、白綿パンを焚きつけた張本人、天パも、彼がここまで早くアプリを消すのが予想外だったのか、どう声をかければいいかわからない顔をしている、未だに横目でパズドラをプレイしながら。

そして先ほど、私の携帯から起動されたポケモンGOは、破けた白綿パンの目線を集めていた。

彼は綿パンの破けた部分を爪で引っ掻き、唇をガタガタ震わせている。

よっぽどポケモンGOに未練があったのあったのだろうか、白綿パンが私を見る目つきは、長年連れ添った彼女を奪った男に対する憎悪にも似ていた。

ブゥオンプシューっという神戸電鉄独特の停車音で駅に到着したが、そこで天パは「じゃあな。」と言いながら颯爽と電車から降りた。

白綿パンは少し虚ろな目で「お、おうじゃなあ」と力なく答えた。

彼らの友情はこれからも続くのだろうか。
たぶん続くだろう。モヤモヤした気持ちのまま彼らの物語は続いていくが、私には彼らを見守ることしかできない。

しかし、いつの日か、白綿パンが激昂し、「あん時お前の一言で、俺は、俺は、ポケモンGOを消してしまったんやぞぉっ!俺の、ピッピカチュウ返せやボケェッ!」と、天パの胸ぐらを掴み壁ドンする時が来るのかもしれない。

不用意に「消せ消せ」と煽るのはやめようと学んだ出来事だった。



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プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
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