2017. 11. 05  
0.jpg

自らを伝説の騎士と思い込み、遍歴の旅に出かけた下流騎士(今で言うフリーター)「ドン・キホーテ」。

自らをベテラン登山者と思い込み、兵庫県の須磨浦公園から宝塚までの全長56km、登る高さ合計約3,000mの道を`ほぼ真顔`でひたすら歩いたビギナー登山家たち。

 挑戦者?阿呆?一体何が彼らを突き動かしたのか…?
56km、合計16時間の歩行の先に得た物とは…!? 

1.jpg2.jpg

この記事では、2016年、私が職場の若手職員とともに挑んだ六甲全山縦走大会の過程を紹介します。
コメディタッチで感情面にスポットライトを当てた記事になっております!



~序章 やっと目を…覚ましたかい?~

11月13日(日) 
AM3:00
 日の光が差し込む気配もまだない闇夜に飛び起き、受付場所の須磨浦公園へ向かいます。

AM4:20
 須磨浦公園に到着して並び始めましたが、この時間にはもう1000人以上は並んでいたのではないでしょうか。
受付開始は5時ですが、交差点のところまで人がおり、この時間に来ても列の後方です。

5時になるまでに、推定2000人ほどが並んでいたので、「優しいUSJのように、アーリーオープンせえへんかな」と、期待していましたが、アリオ(アーリーオープン)はありませんでした…

AM5:20
 3度ほどの練習で完走できる自信に溢れているぼくらアマチュア登山家は、歴戦の勇者(参加者の多くが登山用品完備の中高年)に紛れて、スタート地点から出発しました。

登山自体への意欲はあまりないぼくらは、眠気が若干覚めると同時に、意気揚々と言葉のキャッチボールに励みました。

「若い女の子おらへんな。」
「30~40年前なら、若い女の子やった人はたくさんおるけどな」
「それ、ばあさんやん」
「けど、ばあさんも40年前はJKやろ?」
「たしかに。そう聞いたら、ばあさんがJKに見えてきた」

「みんなステッキ持ってるな」
「ストックな」
「登山は服装でするもんやない。心でするんや」

3.jpg
4.jpg

歩き続けて2時間後くらいでしょうか…
秋空に広がる鰯雲と照りつける太陽-1964年東京オリンピックの表現を引用するなら、世界中の青空を須磨にもってきたかのような晴天-が空を覆い尽くしていました。
 
天気に恵まれた中、歩みを進めますが、六甲山縦走のコースは道幅も傾斜もよりどりみどりです。
 ドラゴンクエストの様に一列になるときもあれば、小学校の遠足の様に、ムダに横に並ぶことも。

そんなぼくらをおそったのは、慢性的な渋滞。
長蛇の列を見るたびに、「見たらわかる。この人らは登山がめっちゃ好きなんだ」
と自分に言い聞かせますが、どこを歩いているときも常に渋滞に巻き込まれ、自分のペースで歩くことができません。

高倉階段、馬の背、菊水山…

5 (1)

名所と呼ばれる場所付近では、渋滞がさらにひどくなります。

しかしたまに、渋滞が解消するときもあります。
そんなときはぐわっとテンションが上がり、颯爽と下り坂を駆けていくのです。

ダダダダッ

そんなぼくをみて、どこからか、小学生を注意する教員のような声がしました。
「走らない!ケ、け、怪我するでえ!」

若い女性教員ならうれしいのですが、声の主はたくましい顔つきのおじいさんでした。



~中章 逃げるは恥だし、今日は逃げちゃダメだ~

PM1:30
大龍寺の山門にてぼくらを迎えてくれたのは、職場の上司2人と同期の女の子でした。
3人はぼくらのために調達した水分と食料を渡してくれます。
わざわざ休日に、ぼくらのために、サポートをしてくださるなんて、とてもありがたいことです。

さっと、胃に入れたお弁当ですが、こんな美味しいお弁当は食べたことがありません。
舌がとけるような美味…
 さらに、豚汁も飲み、エナジー充電は完了。3人のサポートに感謝しつつ、再び歩き始めました。

このときの弁当と六甲山ガーデンテラス付近でボランティアの方から頂いた体の甘酒が本当に美味しかったことは鮮明に覚えています。

宵の口を迎えたころ到着したのは、六甲山ガーデンテラスです。
神戸のオシャレスポットとして名を轟かせるこの場所は、カップルの聖地。
疲労困憊の状態で見る`リア充たちの幸せ`は、非リア充が大半を占めるぼくらには大きすぎるダメージを与えます。

「リア充爆発しろ」負の感情に支配されそうな僕を救ってくれたのは、サポーターの方々からの差し入れでした。
温かいお茶に、食糧。
大龍寺、掬星台に続く3度目のご支援に何度も感謝します。

そして完走を誓い、がっつり握手を交わし、再び山へと踏み込んだのです。

6.jpg

沈み込む夕日、時刻はPM6:00を周り、早朝から約13時間歩き続けてきたためか、そろそろ体力が限界を迎えてきていました。
11月中旬の秋風-つかみどころのない冷たい空気-も僕らの体温を下げにかかります。

PM8:00
 幽暗に閉ざされた竹林を一列に並んでひたすら歩きます。
寂然とした中、聞こえてくるのは、登山者たちの足音だけです。
その音に力は無く、ただ、ザッザという音を規則的に吐き出していました。

真っ暗闇を照らすのは、登山者のヘッドライトのみ。

足はフラフラ、腰は痛い、足の指も痛い、限界を超えた状態で意識が朦朧とする中、歩いている意味がわからなくなります。
終わりが見えない行路に、クソッタレと叫びたくなっていたのでした。

そんなとき、横の茂みの中に入るという妙案が頭に浮かびます。
「逃げようか?逃げるは恥だが、訳にはたつ」

ガッキーと、星野源ちゃんがいちゃいちゃしている姿が脳裏に浮かびます。

しかし、茂みに逃げても問題は何も解決しないのです。
六甲山縦走は、最後のリタイヤ地点、六甲山ガーデンテラスを超えてしまうと、公共交通機関がなくなるので、ゴールの宝塚駅まで歩くしかないのです。
行くも地獄、帰るも地獄、もちろん止まるも地獄
とはこのことです。

それでも、「リタイヤ」という4文字が頭をよぎったそのとき、惜しくも先にリタイヤしてしまったYさんの笑顔を思い出しました。
Yさんというのは、ぼくらの職場のOBでこの六甲山縦走のリーダー、齢71のおじいさんです。

大会前日に酒を飲みすぎて、当日は早々とリタイヤしてしまったYさんの無念を晴らさなくてはなりません…

「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!」

 心の中で天使と悪魔が葛藤を繰り返したぼくは、疲れすぎてイライラするという現象に陥ります。
そう思った、5分後、今度は、急に楽しくなってきて、笑いが止まらなくなりました。
 これこそ喜怒哀楽を詰め込んだ冒険というやつです。

私が交感神経のみを働かせ、情緒不安定に陥っている横で、自律神経のバランスを見事に保ち、淡々と歩くTKO木下似のTの姿がありました。

20160217121750.png

ぼくは彼に告げました。
「疲れすぎたらさ、イライラしてくるんや…」

眉をピクリとも動かさず、ゆっくりとした口調で放った彼の言葉は、
「怒って得することはない。」

悟りを開いた彼の口から出た言葉には御幸が射し、闇夜に包まれて輝いていました。

彼にも疲れはあったでしょうに、それをみせずに力強く歩いていたのです。
黙々と歩く彼の姿が三蔵法師に見えたのはぼくだけでしょうか。

 彼の耳元でぼそっと、「お師匠様~」とつぶやきましたが、お師匠様は振り返ってはくれませんでした。



~終章 最果ての地で~

ひたすら2時間ほど歩いたあと、ようやく山道が終わりました。
ついにゴールと思いきや!
眼下に広がる光景は延々と続くコンクリートの急坂(コンクリートロード)

「後ろ向きで歩いたら楽。」「転がっていけたらいいのに。」
戯れ言を吐き出しながら歩いていると、30分ほどで六甲全山縦走大会のゴールにたどり着いたのです。
そう、7名のメンバー全員で!

ゴールした時間は21時30分。およそ15時間半もの間、歩き続けていたわけになります。

感動でお互い抱き合ったりするのかな?と思いきや、案外みんな普通の顔で、普通な感想を、普通に言っています。

ゴール付近のスタッフからのねぎらいの言葉、「来年も来てくださいね~」という言葉には
「ういっす!」「ははは~」など、各々思い思いに適当な会話をこなしていきます。

我等の女神様が宝塚駅へ舞い降り、彼女と感動をわかちあい、ぼくたちの六甲山縦走は終わりを告げました。

そのとき見上げた夜空には、満天の星が地上の人生とはいかにも関係なさそうにきらりと輝いていました。


後日職場にて、登山部の横断幕に名前を刻みこみます。
登山部に入ったつもりはないのですが、いつのまにか参加メンバーは登山部になっているようです。

そのときに内心では、「めっちゃしんどかったから、もう二度と縦走はしない。」と、思っていたなんて、口が裂けても言えやしない…言えやしないのです。

「本音と建前。社会では、これが必要だ。それが嫌なら、耐えられないなら、とっととやめちまって自分で稼げ。」たった一つの真実にやっと気づいた私でした。

六甲山縦走を通して、僕らはどう成長したのでしょうか。
たしかな答えはありませんが、「忍耐・挑戦・感謝」
この三つの事柄が胸に刻まれたことは間違いありません。

少年ジャンプ編集部もびっくりです。

ど素人の登山部7人全員が完走できたのは、サポートしてくださった皆様方のおかげです。
ご支援いただきました皆様に、再度、お礼を述べさせていただきます。ありがとうございました。



【特別外伝~早期リタイアしたYさんの場合~】

 私は60歳から参加して一昨年、70歳での完走をもって「卒業」のつもりが、後輩の若い皆さん7名がトライし、今年もとの話を聞き「もう一度」と参加することにした。

前夜の「出陣式」で気炎をあげすぎた私は、前日、若者の皆に「朝は4時ごろ出発し、タクシーでスタート受付に並ぼう」と自分で言いながら、当日、目が覚めたのは4時30分ごろ。
「うわっもうこんな時間やん」と思ったのもつかの間、若者たちからは「タクシーに乗った」との連絡があった。

私は地下鉄で須磨浦へ向かい、5:50にスタートした。

平成24~27年の当日はいずれも雨にたたられたが、今年は好天に恵まれた。
ところが私は、前夜の飲酒がたたったのか、体が重く感じられ、不調を感じていた。

そして、鍋蓋山の登りで、ついに「赤鬼さん」がやってきたのだ。
赤鬼さんとは、大会運営者からの刺客で、タイムが遅い参加者たちを無慈悲にリタイヤさせるという、文字通りの鬼である。

「赤鬼さん」は休んでいる私に「無理しないで下さいね」と声をかけた。
普段なら問題ない六甲山縦走も、飲酒がたたって不調だったその「天の声」に、素直に従うこととした。

次の大龍寺ではいつも食べていた「豚汁」の店は片付け終わっており、こんな時に限りほとんど待つことなく「三宮行き」のバスがやって来た。

もちろん飛び乗る。

車内から縦走路の先に向かって一言。
「今日の所はこれぐらいにしといたる」



読んでいただきありがとうございました。
よければ別の記事もご覧ください!

←【目次】 短編エッセィ集 
 爆笑必須のエピソードがてんこもり!

←【目次】俺たちバグジー親衛隊

 おバカ高校生たちの青春ラブコメ小説!


↓ランキングに参加していますので、タップorクリックお願いします!
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村

2017. 10. 07  

「おぉ~~~。
まだ進むんか?
ぬお~。これは酔うわ~」

「なにしてるん?」という私の声も届かないほど熱中しながら、齢55の父が得体の知れない大きな黒いゴーグルをつけながらつぶやいています。

ゴーグルの面積は大きく、顔の上半分はすっぽりと隠れていましたが、下半分だけでも楽しそうにニヤついている様子がわかります。
samsung-unpacked-gear-vr-4.jpg


30秒ほど経って、満足そうにゴーグルを外しながら父は言いました。

「VRゴーグルや。1000円で買った」

「俺もつけさせてや」

「アホか。わしもまだ試したばっかりなんや。
ジェットコースターをもう少し試す」

そう言って再びゴーグルをつけて嬉しそうに、うわーうおー、と声をあげている父の体をぼくは揺すっていました。

「うわっ体まで揺れるんか、VRは」

親父、俺やで。

とは、言わずに、ぼくは幼稚園児のように「ちょ、長いで、そろそろ変わってや 」と急かします。

「しゃあないなあ。はいよ」

「ちなみにこのジェットコースター、どんなんなん?」

「...インド人の声が聞こえるなァ」

どんなジェットコースターやねん、と思いましたが、とりあえずゴーグルをはめて体験してみることにします。

メガネを外して、ゴーグルの中のフレームを覗き込むと、そこには右と左の画面で微妙にちがう場面の映像が流れていました。

ゴーグルの仕組みさえわかれば怖いないと自信を得て、ゴーグルとヘッドホンを装着しました。

目の前に広がるジェットコースターのレールはゆっくりと動き始めます。

装着したヘッドホンからは、確かにインド人の声がします。
ぶれぶれの映像を考えると、どうやらこの動画はジェットコースターの様子をYOUTUBEにアップロードしたもののようです。

速度が上がるコースターの映像をみながら
「おぉ~~~。まだ進むんか?ぬお~。これは酔うわ~」とおどけているぼくの横では父が、
「ちょ、長いで、そろそろ変わってや 」と急かしていたのです。



読んでいただきありがとうございました。
よければ別の記事もご覧ください!

←【目次】 短編エッセィ集 
←【目次】俺たちバグジー親衛隊


↓ランキングに参加していますので、タップorクリックお願いします!

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村
プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

↓ツイッターでブログ更新を通知しています!
やぎぬま るい (@hishintai08)

カテゴリ
訪問者数
頂点を目指せ!
ランキングに参加しています! 応援してくれる方はクリックお願いします!
検索フォーム
ブロとも申請フォーム