2016. 07. 10  
地下鉄新神戸駅から新幹線乗り場まで全速力で走る1人の男。

長い長いエレベーターを、大量の荷物を引っさげ駆け上がって行く。

荷物がとにかく重い。
野球グローブ2つ、運動靴、さっき買った少年ジャンプ…

「磯野野球しようぜ」と今にも誘いたくなるような荷物を持った男が新幹線に乗って向かう先は研修所だ。

何しにいくねん?と自分の荷物が目に入る度に、首をかしげる。


腕時計の針は刻一刻と時を知らせ、俺に時間がないことを報告してくる。

「だいたい乗り換えの時に売店でジャンプ買う暇はなかった!
新幹線乗り遅れたらジャンプのせいやな。ジャンプが悪い。」

責任転嫁しつつ、俺は新幹線乗り場へ全力でダッシュした。


新幹線乗り場の長い階段を駆け上がった瞬間に、新幹線が到着し、なんとか間に合った。

安堵の溜息と共に、頭にふっと記憶がよぎった。


新神戸駅の新幹線ホームに来ると、4年前に浅倉さんを見送ったことが思い出される。
 東京に旅立つ浅倉さんと、浅倉さんの家族と俺。


切なさを抑えるように、新しい社会人生活に思いを馳せた。


寂しい記憶を胸にしまうためにも、俺は席に座るなり、さっき買ったジャンプを開いた。

いつもは20分で読み終えるが、今日は1時間ほどかける。
新幹線の快適な環境のせいだろう。

ジャンプはいつものジャンプだ。
俺の気持ちが違うだけだ。


新幹線のぞみに揺られ、研修へ向かっているが、今、俺の荷物にギターは存在しない。

しかし、ある人が止めてくれなければ、危うく

'新人研修にギターを持参してくる'


というぶっ飛んだ野郎になるところだった。


あれは研修の3日前…

俺は人事課の和高崎さんに質問した。

「研修にギター持ってっていいっすか?」

「えぅ?ギ、ギター。なんで?」

「弾きたいんすよ!」

ドヤ顔で宣言するゆとり世代の丸出しの非常識人を見て、和高崎さんは、首を35度ほど捻った。

「まあいいけど、どうなっても知らないよ。」

和高崎さんは、 'どうなっても知らんで' という言葉を選んだ。

まるで、否定されたら反抗したくなる俺の性格を見透かしたかのようだ。

'やめとなさい'と真っ向から止めるのではなく、俺に考えさせる時間を与えてくれる素晴らしい諫言だった。
戦国時代なら石高10万石くらい増えているファインプレーだ。


和高崎さんの言葉は俺を悩ませた。

研修にギターを持っていく
→現地の教官に切れられる
→入社20日でクビという社内記録更新


というゴールデンルートもあったのだが、さすがにもう少し働きたかった。

高校時代なら、何も考えずに本能のまま行動したが、
さすがの俺でも、社会人としての自覚が芽生え始めていたのだ。

最も、その社会人としての自覚はこの研修で失われるのだが…

てんやわんやの自分会議を経て、俺はギターなしで研修に向かうことにしたのだ。



俺はふと、隣の席の中年サラリーマンをみて、寂しさを感じた。

「みんな関西から東京に向かうのに、なんで現地集合なんや?

集団旅行の新幹線移動で、ワイワイするのが楽しいのにな。
1人1人が勝手に現地へ向かうって、なんかさびしい」


そんな思いが浮かぶこと自体まだ、俺の中の学生気分が抜けていない証拠だった。


慣れないスーツに身を包み、1人、黄昏ロマンスにひたった俺を乗せた新幹線はあっという間に東京に到着した。

東京を通り越し、千葉の某所にある研修所に到着し、併設されている宿泊所の中に入る。

全員バストイレ付の個室。

なんて贅沢な部屋なんだ。

俺は早速、ベッドに倒れこんだ。
フカフカな感じを全身で体感して飛び跳ねるアレだ。


バィンバィンと、ルフィ・ギア4のような跳ね具合を楽しんだのち俺の頭は、ぱっと閃いた。
628797.jpg


体が反射的に動き、1000円冊を握りしめ、自動販売機の近くへ飛び出したんだ。


有料ビデオカードが、売っているのかどうか?


あるはずがない。

100人が100人、「研修所で、研修生用のAVなんて用意されるはずがない」そういう結論を出す。

しかし、俺は、自分の目で確かめたかった、奇跡を信じたんだ。

もちろんなかった。

「AV見れんのかよー!
かあー、研修所も気が利かへんなあっ!」


能天気に呟く俺の背後から、教官らしき人が、ぼそっと放った。


「お前、ナニシニキ・テ・ルネン...」




次回予告

第一印象が今後を決める、注目イベント自己紹介が始まった!
サザエさんが現れる?!

7月11日(月)
第八話 自己紹介でやらかす 前編





-俺バグ延長戦- 拝啓、いつかの君へ
theme music 
THE DAY HAS COME 2019




俺バグ延長戦2
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プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

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やぎぬま るい (@hishintai08)

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