2016. 07. 12  
真面目な雰囲気の中、自己紹介は後半戦を迎えていた。

俺はペンを片手に、メモ帳にネタを考えている。
「どうボケたらこの、真面目な雰囲気の中で、笑いをとれるのか…」

煮詰まって頭が固くなりつつあったとき、大声が聞こえた。

「ッコンチャッーッスッ!!!」

これが平和に過ぎ去ろうとしていた自己紹介に、嵐を呼び込むファンファーレとなった。

「こんにちは」
原型もとどめない

ッコンチャッーッスッ!

という運動部特有の造語。

とれたてピチピチの鯛のように粋のいい青年は笑顔で語った。

「僕、去年まで、高校生でした!
社会人として、しっかり頑張っていくんで、
みなさん!よろしくお願いします!!」

ムキムキの肉体とアンバランスなはちきれんばかりのスーツ、

体育会系ゴリゴリのダイナミックな野郎をみて、思わずテンションが上がってしまった。

「大物がおるやんけ!
おもしろくなってきやがった!」



間髪入れずに、またもや大物が出てきた。

見るからに、硬派で、田舎から出てきた感じの純朴な青年は、少し恥ずかしそうに語り始めた

「大村純です。よろしく…お願いします。
えっと…好きな食べ物は…

いちごのショートケーキです。甘いものが好きです。」


耳を疑った。 

いちごのショートケーキなんて言葉聞くのが久しぶりだっただけでなく、
その言葉を研修の自己紹介で意識させられるなんて夢にも思わなかった。


俺は、一瞬固まったのち、

カッカッカッ

という、`大学時代に「その笑い方キモいからやめて」と女子に真顔で言われた笑い方`をした。

しかし、笑っているのは、俺だけだった。
あいつ何笑ってるん?という視線を若干浴びたが、気にせず、心の中で突っ込みを始める。

この自己紹介って好きな食べ物を紹介するイベント?
それよりいちごのショートケーキって!
めっちゃ硬派な顔して可愛いやん!

ギャップありすぎやろ!


ッコンチャーッスの元山、いちごのショートケーキの大村


この単調な自己紹介で強烈な爪痕を残した二人を俺は尊敬した。

「俺も負けるわけにはいかん!あいつらより目立たなくては!」と、奮い立った。

ただ、問題は、彼らが二人とも高卒ということだ。


高卒だから、ある程度のやんちゃさ、あどけなさが許されるのであって、
大卒の俺が彼ら以上にちょけようとするのはいかがなものか?

そもそも、彼らはちょけたわけではないかもしれない。
真面目に攻めた結果がちょっと目立っただけかもしれない。

しかし俺は今から、`あえてふざけに行く`

考えるうる限り最大限のボケを用意した俺は、ゾックゾクしながら順番を待った。


ついに前の前列の6人が自己紹介を終え、順番が回ってきた。

最後のトリだ。

「真面目なこの会場を爆笑の渦で包み込んでやる!」

そんな決意を胸に、さっと立ち上がった。
マイクを持った男のところへ向かうなり、
屋台のおじさん風に「っちょいとごめんよ」と叫び、喰い気味にマイクを奪った。


「えぇ~。みなさんこんにちは!

武田歳三、と申します!

ちょっと、みなさんに、確認していただきたいんスけどね?

この会場の席の配置、僕の席だけ出っ張ってて、一人だけ浮いてるんですよ!

この会場でテトリスしたら


僕だけ、消えずに残ってまいますよっ!」


`ボケてやったぜ`
そう思い、なんとなくいい気持ちになって鼻の穴が大きくなる。

いつもの3倍、空気を吸ってやった、ダイソンもびっくりだ。


俺のドヤ顔とは裏腹に、会場はわりかし、静かだった。
幾人かが下を向いて失笑している。


シンデレラのガラスの靴が割れるようにひとつのロマンが脆くも崩れ去った瞬間だった。


大丈夫、ここからが勝負だ。

「僕ねー。麒麟の田村に顔が似てるって言われるんスよねー!」

高校時代からのテッパンねたでフォローに回る。
このあと、距離の下りをして、笑かす予定だったのだが、自己紹介にも持ち時間がある。


俺を囲む教官たちの「お前長いからそろそろ終われ」臭
にびびってしまった俺は、オチを言わずに話を終えた。

ただ、スベったやつになってしまい、なんとなく腑に落ちないまま落ち込む。


10分前
「みんな普通。俺がおもろいこと言ったるっ」

上から目線でえらそーに物申していた自分を、即座に恥じた。


何やってんだ俺は?
そもそも、誰もが、この自己紹介に笑いなんて求めてなかったのかもしれない…


自己紹介は終わり、各自が散らばり、会場を後にした。


そんなとき、高校生二人が俺のそばへ寄り、俺も彼らのところへ向かった。
中間地点で、自然と3人が集まった。

三国志の桃園の誓いのような集まり具合。

無題

ゴリゴリ体育会系本山が笑顔で言う。
「スベってましたね!テトさん!」


「テトさんってなんやねん!」

「テトリスの話ですべったからテトさんっすよ!」


4歳年下から、テトさんとかいうわっけわからんあだ名をつけられたからには
今後その名前で呼ばれるたびに、今日のこのすべった悲劇を思い出すしかない。

人生、失敗と挫折を糧に成長していくしかねーなあ。

改めて飛躍を誓った俺は、テンションが合うが4歳下のやつという、
自分の精神年齢の低さを改めて思い知らされ、部屋に戻った。





次回予告

ノリの軽さと底抜けのアホさ。
それだけで今日まで生きてきた俺。
その性格が、「あいつ調子乗ってる」と数多くの敵を生んできた…
もうそんなことは気にしない、嫌うなら嫌えばいい。
社会人になっても自由気ままに生きていきたい

そんな中、ボディソープの存在が俺を惑わせ…


7月17日(日)
第十話 ノリの軽さとアピ太郎





-俺バグ延長戦- 拝啓、いつかの君へ
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THE DAY HAS COME 2019



俺バグ延長戦4
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プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

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やぎぬま るい (@hishintai08)

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