2016. 07. 31  
研修では、ちょっとした出来事が起こる。
 

男と男の本音の卓球ほど、醜くアホなことはない。
 

研修場にはまるで俺たちに、

'遊べっ!この世の全てをそこに置いてきた'

とゴールドロジャーが叫んでいるかのように、卓球場が設置してあった。

「社会人研修のアフター5と言えば、1日の復習やろ。
卓球なんてするはずないわ。ガキじゃあるめぇしっ!」

「そうやな、研修場側も、俺たちを舐めてくれてるもんやでぇっ!」


真面目ぶっていた俺たちだが、もちろん、研修中しっかり卓球に励んでいたことは言うまでもない。


ある日、俺と筒香は、卓球台を挟みラリーを続けていた。

そんな時、筒香はカイジの慟哭のような表情を浮かべてふっと言葉を吐き出した。

「俺の中でな、蛍子ちゃんは天使枠なんや。」

突然のカミングアウト...
好きなんやとかじゃなくて、
'天使枠'の暴露。

'天使枠'なんて人生にあったっけ?

そんな疑問よりも、俺は筒香に問い詰めたいことがあった。

「え?お前、本人の前でも、下の名前で、'蛍子ちゃん'って呼んどん?」

この言葉を発した俺の顔を想像してほしい。

ガチッ

本気の嫉妬だ。

わりかし'パラミシア系 草食男子'の筒香がいつのまにか蛍子ちゃんのことを、蛍子ちゃんと馴れ馴れしく呼んでいるかもしれないっ。

俺は、か細い目をグイと見開き、この世界中の空気全てを吸い込むかのように鼻の穴をフュイと広げた。

俺だって呼びたいのに...

'ネタンデルタール人'(back number大先生の造語)の誕生だ。


俺の必死の嫉妬を汲み取った筒香は、恥ずかしそうに口をすぼめながら答える。

「いや、呼んでない...

って、本人の前では呼べるかいっ!」

頼まれてもいないのに即座に繰り出されるノリツッコミにこそ、筒香を大阪人たらしめる理由が詰め込まれている。


「俺も下の名前で呼びたいわ。」

「俺も呼びたい。」


2人はラケットを台に置き、意味もなく無言になり、ボーッとした。

無力という言葉が、俺たちの頭の中で点滅する。


沈黙を破ったのは、'生粋のアホ枠'を15年以上死守してきた俺だった。

「じゃあさ!
今から卓球で勝負して勝った方が蛍子ちゃんって呼べることにしようぜっ!」

「えっぇーっ?!」

筒香はマスオさんを超えるほどの驚きようで腰を抜かした。

「筒香も蛍子ちゃんって呼びたいやろ?」

「まあ、呼びたいけど、なんか恥ずかしいやん。」

「恥ずかしのは、初めの1回目だけや!
何回も呼んでたら慣れてくるぞ?」


「その1回目が難しいねん。」

「勇気を出さねぇっっっとっ
なにも手にはいらねぇんだよっっ!」


少年漫画の主人公のような熱い台詞を吐き出した俺だが、言ってる内容は大したことはない。

しかもそれを言うてるのが俺なのでさらに説得力もない。

俺の小さな瞳は基本的に何も考えてないようにみえるが、本当に何も考えていない。


筒香は内心「この麒麟の田村顏、なに本気になってるねん。」と冷笑しているだろう。


一つ断っておくが、ここに蛍子ちゃん本人はいない。

俺と筒香は、本人の了解を得ず、彼女の知らないところで勝手に、蛍子ちゃんと呼ぶかどうかの話し合いをしている。

しかも俺の顔はガチ、筒香もわりかしガチだ。


蛍子ちゃんにとって、
これっほど、

どうでもいいことはない。

たぶん彼女がこの場にいたとしても、いつものエンジェルスマイルではなく、鳩が豆鉄砲を食ったような興味のなさそうな表情をするだろう。

それほど、この口論はくだらなかった。


1分後...

筒香が覚悟を決め、高らかに戦いのゴングがなった。

「じゃあこの試合勝った方が、蛍子ちゃんを蛍子ちゃんと呼ぶ!

いくぞっ!」

「おうっ!」


ここからはしばし擬音語のみでお楽しみください!


コンコンコンッ

カッッ

ピシッ

ココここっコンコン

シェッアーッ

うっおわあっ

コンコンッ

キッッン


「俺が呼ぶっ」

「俺が'蛍子ちゃん'って呼ぶんやっ!」

コンコンコンコンチュイーッンカツン

コンコンコンコンッ



戦いの途中、筒香が、ボソッとこぼした弱気な発言を俺は聞き逃さなかった。

「ちょっあかんわ...
俺さ、勝っても、'蛍子ちゃんの前で蛍子ちゃんって'言える気がせん。」

卓球というスポーツに技術は関係がない。

気持ちの問題だ。

「絶対勝つっ」

「蛍子ちゃんを蛍子ちゃんと呼ぶっ」

その思いに関して、俺が筒香を上回った瞬間だった。

カッッンッ

真っ白な白球は、筒香サイドのコートの端っこをえぐるように通過した。

シェッアーッッッ

投げ終わったあとの室伏のような姿勢で発する俺の勝利の咆哮は卓球場に響き渡った。


次の日、早速蛍子ちゃんのことを

「蛍子ちゃんっ」

と呼んだ。

あの時の俺の顔は、


めっぇっっちゃ...


気持ち悪かったと思う。




次回予告

新手のナンパを受けるおれ!
まさか、女子に映画を一緒にみようといわれるなんて... !?


8月7日(日)
第十三話 新手の逆ナンパ「今夜、タイタニックどうっすか?」




-俺バグ延長戦- 拝啓、いつかの君へ
theme music 
THE DAY HAS COME 2019



俺バグ延長戦3
スポンサーサイト
NEXT Entry
GLAY 幕張 ファンクラブLIVE 1日目レポート 7月30日(土)
NEW Topics
5回表 阪神電車にて、マイルドヤンキーを観察
遅すぎた撤退 ~1ヶ月で2ヶ月分の給料が消える~
延 Ⅲ章 7話 サッカー大会(1)
4回裏 飛行機に乗り遅れると、焦りますが。
躍動感あふれる小兵・宇良 大相撲
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

↓ツイッターでブログ更新を通知しています!
やぎぬま るい (@hishintai08)

カテゴリ
訪問者数
頂点を目指せ!
ランキングに参加しています! 応援してくれる方はクリックお願いします!
検索フォーム
ブロとも申請フォーム