2017. 09. 15  
俺バグ延長戦Ⅲ章




2016.6.2
業務が終わったあと、蛍子ちゃんの課に顔を出し、声をかける。

「蛍子ちゃん。昨日言ってた漫画持ってきたわ。」

「ありがとう」

「仕事もう終わり?」

「うん!」

「一緒に帰ろうや!」

「おっけー」

…え?おっけーなん?
あまりにすんなり承諾してくれたので、俺は心で驚いた。

「じゃあ外でまっとくわ。」

そう言い部屋を出た俺は、廊下で蛍子ちゃんを待つ。
掲示板のポスターを見ているが内容は頭に入ってこない。

目を瞑り、耳を澄ませる。

蛍子ちゃんまだかな?

カッカッカッ

これは、違う、男の足音や。眼を開くと、叔父さん社員がいた。

蛍子ちゃんまだかな。もう一度目を瞑る。

カンカンカンッ

甲高いハイヒールの音…
きたっ!

すぐに振り向きたかったが振り向かない。

蛍子ちゃんは俺に声をかける。「おまたせ」

俺はキザなキャラを演じ、調子に乗ってしまう。「おう!帰ろっか!」

共にエレベーターへ入る俺と蛍子ちゃん。
エレベーターが閉まる間際に、部長も入ってきた。
部長とは、とてもとても偉いお方だ。

俺の心臓はバクバクしているが、それはこの密室で蛍子ちゃんと共にいるからなのか、部長の威圧感なのかはわからない。

蛍子ちゃんは、本来俺とは反対方向の電車だが、今日は友達と飲み会らしく俺と同じ方向の電車に乗った。

蛍子ちゃんの高校時代や中学時代の部活のことを聞く俺。
なんと彼女はテニス部のようだ。

俺はさりげに「また今度テニスしようよ」と言った。

「いいよ。久しぶりやからできるかなあ」
蛍子ちゃんとテニス、想像しただけでもう楽しいからおなかいっぱいだ。

あっという間に梅田に着く。
1人で電車に乗る時の3倍速だ。赤い彗星め

蛍子ちゃんと並んで歩くだけで心がうきうきになる俺。

「蛍子ちゃん、飲み会どこで集合なん?」

「大阪駅やねん。」

「俺も行くわ。」

「え?武田君、阪急なんちゃうん?JR遠いし…」

俺にとっては、遠いとかどうでもよかった。
ただ、蛍子ちゃんともっと話していたかった。

こんなこと言うのは気持ちわりぃと思ったが、俺はストレートに気持ちを伝える。

「もっと、蛍子ちゃんと話したいねん。大阪駅まで行くわ。いい?」

「明日も一緒に帰ればええやん」

蛍子ちゃんは、微笑みながらそう言った。

俺は心が撃ち抜かれた、そこで足が止まった。

「じゃあ。」

そう言い、大阪駅へと歩く蛍子ちゃん。俺をみて笑って手を振ってくれる。
俺はこの時自分がどんな顔をして何を話したかを覚えていない。

ただ、「明日も一緒に帰ればええやん。」という言葉が脳内を駆け巡っていたことはたしかだ。

俺は人生最大級の笑顔で、変なステップをしながら阪急梅田駅へ歩き出す。

1分ぐらいして急に冷静になった。
あの言葉は、俺を振り切るための方便か?

それとも、大阪駅と阪急梅田駅の遠さを見越して俺を気遣ってくれたのか?

どちらか、わからないし、蛍子ちゃんの本心はわからないが、明日も蛍子ちゃんと一緒に帰ろう。誘ってみよう。

明日になればわかることだ。


次の日…

「珍しく忙しいぞ...どうした金曜日?」
社外からのやりとりに追われ、係長からは大量のコピーを依頼されていた。

普段は係長と談笑しながら平和に働く俺だが今日は違う。
必死に業務をこなした。

なぜか?昨日の蛍子ちゃんの言葉が頭から離れないからだ。

「明日も一緒に帰ったらええやん?」
そう、俺は蛍子ちゃんと今日も帰れると期待していた。

必死に業務を終わらした俺は、定時で仕事を終わらせることに成功する。

ちなみに係長は必死で働く俺を横目に、先に帰宅している。
(ああいうラフなとこも好きなんやけど、ちょい悔しい...)

定時に仕事を終えたあと、変な駆け引きをする。
「いつも洗面室で蛍子ちゃんに会うときは、俺の方が早くに居る。

なんでかって俺が定時に上がってすぐ洗面室にいってコップを延々と洗いながら待ってるからだ。
けどこれきもくないか?
蛍子ちゃんをめっちゃ待ってるみたいやん(いやその通りなのだが)」

そこで、俺は自分の仕事が終わってから5分ほど時間潰してから洗面室に向かった。

蛍子ちゃんと出会ったのは、彼女がコップを洗い終え、課に戻るところだった。

「蛍子ちゃんお疲れ!」

「あ、おつかれ」

少しそっけない返事だった。
その時に、「一緒に帰ろう」と言えなかった俺の負けかもしれない。

俺はコップを洗って自分の課に戻ったあと、蛍子ちゃんの課を訪れたが彼女の姿はそこにはなかった。

俺は落胆しつつも先輩に尋ねた。「蛍子ちゃん帰りましたか?」

「帰ったで。」

「え?いつですか?」

「2分前ぐらいかな」

俺は絶望した。
「ほんますか?!それはつらすぎる…」

「どうしたん?」

「今日蛍子ちゃんといっしょに帰りたかったんですけどできませんでした。
ショックなんで、月曜日会社休みますわ」


「え?メンタル弱っ」

この日の俺は憂鬱だった。
蛍子ちゃんと帰れたか帰れないかでこんなにも気持ちが違うのか。

勝手に期待して、勝手にがっかりして、一喜一憂している。
俺はバカだ。


そんなとき、キャプテンの言葉が浮かんだ。
「人に期待するな」


2016.6.8
通勤電車から窓を眺める。丁度、稜北台高校の生徒が登校する姿が見えた。

髪の毛の色、流さ、身長、スカートの丈、全てが浅倉さんにそっくりな女子高生に俺は目を奪われる。

...浅倉さんはどこで何してるんやろな。俺にはそれを知る術もないし、関係のないことか...


疲れ切った月曜日、黄昏に浸る。


30分前、6月始めての月曜日は最も望ましくない形で幕を開けた。

「あんた何時やと思ってるの!?仕事休む気!?」
母の怒声で目が醒める。

寝起きは、好きな女の子に起こしてもらってトーストとおしゃれなハムエッグで決めたいなんてものは幻想だ。

起きれないなんて当然だ。目覚まし時計をかけていないからな。

母の怒りが爆発する。
「いい加減にしなさい!毎日毎日遅刻ギリギリに起きて!」

俺はいつも通り対応する。
「俺が遅刻しようが関係ないやろほっといてくれ」

さらにキレる母。「あんた仕事を舐めてるの?」

「舐めるとかじゃない起きれるときは起きるし、起きれんときは遅刻ギリギリ。それだけの話。」

運悪いことに休日出勤の代休で家にいた父までも俺を攻め立てる。

「お前が原因作るから悪いんやろうが!ええ加減にせえよ!」

両親からカチキレされる俺。高校一年生の頃と同じだ。

あの頃もそうだった。
これは俺の新生活特有の現象かもしれない。

大学では起こらなかったが、高校、社会人と、学校、職場での生活が楽しすぎて遊びまくる。

もちろんあまり家にいないし、疲労がたまって朝は起きれない。

金も湯水の如く使いまくり、破綻寸前。
そんな俺に両親は失望し、ガミガミ説教をするが、俺は親に何を言われても気にしていないので、変わらない。

いや、高校の時ならまだ親に叱られて反省する部分はあった。

ただもう社会人なんだ。

「俺の人生は俺が決める。」

遅刻する、職場の信頼がなくなる。

そんなことわかってる。わかってるけど、遅刻はしない。
遅刻ギリギリの時間に合わせて起きるようにしてるからだ。

「ギリギリに行ってたらそういう奴やと態度で見られる」

そんなこともわかってる。

ただもう、自由にさせてくれ。もうなんでもええんや。

このヤケクソ感はまさしく、浅倉さんに振られた後の高校一年生時代の6月と同じだ。
現に今も蛍子ちゃんに振られて、(厳密には振られてはない、彼氏がいるだけ)やってられなくなっている。

大学4年生の最後に、「俺は変わる、成長する」と誓った。

ただ、全然成長していない。高校一年生時代に戻るなんて退化なのか?

違う。
これでいいんだ。

俺は大学時代、人間として堕落した。
成長するためには、もう一度高校時代のバイタリティを取り戻す必要がある。


家での居場所がないからこそ、職場でテンション上がる。

親にキレられたって構わない。そんなことは無視して部屋でギターを掻き鳴らし自分の世界に浸るだけだ。


「俺なんかがさっちゃんと付き合うなんて夢のまた夢か。脈もねーし彼氏おるし、やってらんねーよ...」
俺はそう思い、また負け犬になりつつあった。


そんな追い込まれた日々のある日の朝、ラインをみると41もラインが溜まっていた。
送り主は友人ギアル...

そのメッセージには、俺を奮い立たせる言葉と数々の恋愛論が詰まっていた。



「とっしーが蛍子ちゃんを誘ったスクショみたで。改めて見ると文章の書き方もセンスないなあ
本気で蛍子ちゃんと付き合いたいならもっと周りを見るべきやと思う

努力せずに人を惚れさせるなんて学生までちゃうかなと思いませんか?

それとなぜラインで誘う?
男はラインや電話を連絡手段して使うけど
女はラインや電話をコミュニケーションツールとして使いたがる。

この言葉赤線な。
(俺は赤ペンを取り出し携帯画面に書き込む)


だから蛍子ちゃんにラインをする時は世間話にするべき
しかし今はお前にベクトルが向いてないから頻繁に送りすぎもあかん

毎日、仕事の終わりにサイコロ振って1の目が出た時だけ送るとかやれば例えばやけど

そうやって不規則性を持たせて送るといい。理由は相手から今日ラインくるやろなあとか舐められへんため。サイコロなら実質6分の1やから週一のペースやしな。

仮に二日連続でサイコロの1の目が出たとしてもそれは構わずメールを送れ。何回も言うけど重要なのは不規則性を持たせること。

そして送る文やけど例えば、昼休み話した話題などを引っ張って相手の事を書く。自分のことを書きすぎたらあかん。
そして相手が返信しやすい文章であるかどうかを見返す

?を使うと効果的。でもやりすぎるとしんどくなるので注意。

後は、さっちゃんに返したくなるような見出しにするんや。

25文字表示されるみたいやから。

例文はこれや。

仕事お疲れ!

いつも、蛍子ちゃんって割と遅くまで起きてるタイプなん?
今日ちょっと眠そうやったけどピアノの練習しすぎなんちゃうん?笑
あんまり無理したあかんで〜〜

後は返信きた後、返信する時間も不規則性を持たせる。

時間感覚は充分開けるべき。むしろ既読無視する勢いでもいいと思う。仕事場で毎日顔を合わせる以上、相手にストレスがない程度にするのがいいと思う

最後に、俺はお前だけの本当のこと言うマンだ。
No.1じゃない。Only1だ。


検討を祈る。アディオス!



俺は、ギアルのマジすぎるアドバイスを画面に食い入るように読んでいた。

このラインが送られた時間は朝6時40分。

俺は思った。
「あいつフリーターやのに早起きやな」

ギアルの激励に感謝し、俺は気持ち新たに蛍子ちゃんにアタックすることを誓った。

まあ、無理やけどな。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告

来週は俺バグ、
高校生編を掲載いたします!!!






-俺バグ延長戦-
作者が弾き語るエンディングテーマ

 「ふがいないや」 YUKI 


俺バグ 文末 乞うご期待 (1)
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プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

↓ツイッターでブログ更新を通知しています!
やぎぬま るい (@hishintai08)

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