2016. 04. 12  
昼休み、円谷は課長に話した。
「毎日定時で帰って申し訳ないです。
みんな忙しそうやのに、僕だけ...」

課長は柔和な笑顔で円谷に答える。
「気にしなくて帰っていい。いずれ帰れなくなるからな。それに今はまだ業務も把握できていないやろう。大丈夫や」

円谷はその言葉を鵜呑みにして、今後も毎日がっつりただ1人定時で帰ることになる。

仕事はないが周りに気を遣って定時に帰れない同期と違って、彼はすぐに帰る。
遠慮しないというのは、ある意味いいところなのかもしれない。

ただの自己中心野郎かもしれないが...


その日の勤務後、初めての花金がやってきた。
毎日が日曜日の大学生時代とは違い、休日前がめっさ嬉しい。

円谷は他の課の先輩社員から飲み会に誘われた。
ついで的な感じやったが、彼は喜んでついていく。


集合時間は定時勤務終了時間の30分後。
円谷は定時で終わったので、ロビーで待っていた。

すると、威圧感のある他の課の部長が1人で座っていた。
円谷は生意気にも1人で部長に話しかけた。

「懇親会で一度お会いした円谷です!覚えてくれてますか?
配属されたばかりですが、これから頑張ります!」

部長は、覚えてると言い、最初は間違えてもいいから、一生懸命働くことの大切さを説いてくれた。

そのあと、他の社員が部長を呼びに来た。
その社員は威圧感ある部長と話している俺を見て不思議そうな顔をする。

部長誰と話してるんや?
新卒?
小生意気なやつやな。

そう思われたかもしれない。

ただ、円谷は後悔していない。立場の高い人と話せるチャンスは少ないし、人生経験豊富な人からの金言は何にも代えがたい宝だと感じていたからだ。

その後、飲み会は、普通に楽しんだ。

「職場の人間関係は本当に大事だし、飲みにケーションっちゅうやつは楽しいな」
彼はひしひし感じた。

唯一の心配事は、同期、一つ上の先輩社員があまりに忙しそうだということだ。
飲み屋に来たのが9時過ぎの人もいるし、疲れ切った顔の人が多かった。

円谷だけは毎日定時に帰っているが、社会の厳しさを彼はまだ知らない...
だが、厳しいだけではない。

彼は今後、多くのものを学んでいくことになる。


To be continued...
2016. 04. 14  
初めての残業。
円谷は18時10分まで働いた。

たったの25分だ。
文句言うほどのことではない。

ただ彼は、悔しくて悔しくてたまらなかった。

円谷が残って仕事をした理由は、彼が作った書類に幾つか間違い箇所があってそれを訂正していたからだ。
自分のミスのせいで上司にも迷惑かけるし、円谷も帰れない。

「俺は、たかが書類1枚満足に作られへんのか...」
彼は無力感にやってられなくなりながら、なんとか書類を訂正してから帰った。

円谷は残業代がもらえる仕組みをよくわかってない。
たしか、上司からの判子とかがいるそうだが、
自分のミスで25分残って仕事したことに、残業代つけてくれなんて言えなかった。

円谷はモヤモヤした気持ちを抱えながら梅田の街を走った。

彼は辛い、哀しい時には走る癖がある。
イヤホンから爆音の音楽を聴きながら
駆け足で進むと、気持ちが楽になる。

すれ違う可愛い女の子をみて(大半が彼氏と歩いてる)思う
「なんかめっちゃ手違い起こって可愛い子が俺に告ってくれんかなー」

発想が負け犬だ。
しかし、彼はこの負け犬のまま人生を終えたくはなかった。

その意味では、今日のこの初めての残業は、仕事に慣れて気持ちが緩んでた円谷への教訓かもしれない。

彼は確実に、調子乗っていた。
入って2週間、割と業務も卒なくこなし、毎日定時で帰り、有給もいきなり計5時間もとった。

「謙虚でおらなあかんは、ほんまに。」
彼は染み染み呟いた。

円谷は大した人物じゃない。
書類もまともに作れへん馬鹿野郎だ。

同期には学歴と確実さ、正確性で劣り、先輩たちには経験含め、全てで劣る。

「しんぷる悔しい。使いもんならへん人材のくせに調子乗りやがって。」
彼は自分への怒りがはじけそうだった。

ただ、怒ったところで何も生まれない。
この問題を解決するには一つしかない。
彼が成長するしかないのだ。


「気ぃ引き締めて明日から頑張ろう。」

彼の生きる原動力は、悔しさだ。

悔しさをいつまで持続できるか
このままで終わってたまるか。
成長してやるんやって気概をもっともっていくしかないのである。

円谷は帰宅してから、悔しい気持ちを発散した。

イヤホンから爆音で流れる音楽を歌いながら、全速力で家の隣の小学校を一周する。
「あの子もどっかで頑張ってんだから俺もこんなとこで終わってたまるか。」

ギターでは自作曲を全力で歌う。

ジャカジャカ

それだけが、悔しさを昇華してくれる

明日への希望を生み出してくれる

負けてたまるか!


To be continued...
2016. 04. 18  
キョウモキョウトテアイモカワラズ定時退社、円谷夏生、入社10日連続定時退社を継続中。
(そのうち2日は時間有給消化)

彼は、ただただ早く帰っているわけではない。働いて学んだことも多くある。
円谷の上司は、1から10まで指示を出さない。
いや、指示は殆ど出さない。

円谷は前例を踏襲したり、前任者に聞いて、なんとか仕事を探している。
指示待ち人間になるよりこっちの方がええのかもしれない。

わからないことを聞いたら答えてくれるし、放任主義なんやろう。
いい上司やと思う。

係長は言う。
「まだ入って1週間。指示あまり出さずにほったらかしにしてるけど、いずれ自分で考えて仕事せなあかんからな。ゆっくり学んだらいい」

仕事というのは、知識を身につけていくことでもあるのかもしれない。

無知ということは罪だ。知らなければ何もできない。
仕事で頼りになる人というのは、経験がある人だ。

色々な経験を積んでいる人はどんな事態にも動じない。
どっしりと構えている。

仕事に限らない。
誰かを納得させるためには、自分が実力をつけないといけない。

実力…

知識、体力、風格

いろんな人間としての魅力を高めなければいけない。


口先だけではいけない。

もっともっと頑張ろう。

To be continued...
2016. 04. 21  
働き始めて2週間
円谷はここまでの勤務を振り返った。

勤務自体で困ることはあまりないが、雑な性格が裏目に出ている。
仕事はきっちりしないといけないとひしひし感じた。

係長からの金言は彼の心に深く刻まれた。
「常に細かいところまで丁寧に仕事をしないといけない。

新人やから仕事できないのは仕方ないからこそ、細かいところを丁寧に確実に。
判子を確実に押す。挨拶をしっかりする。書類を綺麗に織り込む。そういう細かいことを、周りは、相手はみている。全て繋がっている。」

意識するしかない。

丁寧さにきっちりと。

日頃の行いから意識するしかない。
彼はそれを刻み込んだ。


社会に出たら勉強しなくていい。
早く自由に生きたい。
この縛られた社会的立場から脱却したい。


高校生まではそう思ってた。
そう思っていた人も多いだろう。

しかし違った。
社会人になってみたら理想とは全然違う世界が待っていた。

毎日が勉強。

宿題なんてないが業務が残れば残業。
お金があっても、時間があっても口うるさく言う先生や親がおらんくても

時間的な余裕がなけりゃ自由とは言えない。

円谷は毎日自分を奮い立たせている。

学生時代、高校時代に戻りたい、そういう思いは消えないが、今を生きるしかない。


今後も何年かの短いスパンで部署が変わって、また新しい仕事を勉強するのだろう。
勉強のほうが楽だと彼は気づいた。

仕事は前例をこなすだけやなくて、今後より効率よく行うために精査しないといけない。

座って人の言うことを理解するだけの学生時代より頭を使わないといけない。

大卒社員で大体20万円くらい初任給をもらう。
土日が休みだ。
祝日有給合わせたら月に17.8日働いてる。

つまり1日1万円以上もらえている計算だ。
7時間45分働いているから、時給換算すると1300円以上か。

それほどまで価値のある働きをできているのか?

彼はそんな疑問をひしひしと感じた。

疲れた顔で電車に乗るといろんな人がいる。
極限に疲れ切ったサラリーマンを見ると、自分の疲れなんてまだまだ可愛いほうやと思える。

ど暇そうな顔して、電車でツイッターとラインをしまくる大学生。
びっくりするほど可愛い彼女連れてデレデレ笑う男。

そういう人をみては、自分の現状と比べてしまう。
「毎日満員電車に揺られて往復3時間、彼女も出来る気配ねーなあ」

そんなときに、ある男の言葉が頭をよぎる。
この言葉を胸に、また前を向いて生きるしかない。

「人に期待するな。人と比べるな。
それさえできればお前は最強のメンズになれる!」



To be continued...

2016. 04. 25  
明細書にとんでもない額が書かれていた。
予想の3倍...赤い彗星...

しかし円谷は気づいた、初任給には交通費が含まれている。
6ヶ月分だからそれはそれは高額だ。

片道90分の長距離通勤の彼の定期代は高い。

通帳に多額の金が入ったが、安心してはいけない。
定期代は来月末にクレジットカード会社からどかっと引かれる。

その他にも彼は、クレジット7.8万以上利用しているのだ。

クレジットというのは怖い。利用した実感はないがいつの間にか金が引かれて行く

恐ろしい仕組みだ。

使ってないのに金がなくなるなんて
いや、使ってるんか


梅田の銀行でドキドキしながら金を引き出す。

そのときに円谷は感じた。
「しっかり働いて金を得るっていうのはええことや。感動がバイトの給料とはちゃう。」

通帳に記帳しただけでテンションが上がる、スキップで梅田を駆け回った。


円谷はその初任給をどう使ったのか?

貯金はほとんどしなかった。
初任給は自由に何も考えず、使いたかった。

来月から貯金(というか学生時代の借金返済)にかかるので、初任給はパアッといく方が景気がいい。

特筆すべきは、あのケチな円谷が、家族にご飯を奢ったことだ。
じいちゃんばあちゃん、父母交えて5人で寿司屋に行った。
回らない方だ。

14386円

こんな金額のご飯代を1人で払ったのは初めてだった。

父は「天変地異が起こる」といい
祖母は「ええのか?」と心配していた。

円谷は平気な顔して支払った。これが大人の階段を上るというやつか。

ここまで世話になった両親と祖父母に、まず一つ恩返しをした。

その後、祖父母が就職祝いに封筒をくれた。
その中に2万円が入っていた。

「これじゃ俺が奢ったことにならへん、また今度家族と飯行って奢ろう。」

一人暮らしする前にできるだけ親孝行しておこうと思った円谷であった。

こんな発想円谷では考えられない、いったい彼はどうしたのだろうか?


To be continued...
プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

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やぎぬま るい (@hishintai08)

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