2017. 06. 30  
俺バグ延長戦Ⅲ章




5月14日、隣の課の係長は俺に言った。
「武田、お前フットサル大会出るか?」

「出ます!」

「おお、ありがとう!今年は大幅な戦力ダウンでな…」

「心配ご無用、僕が旋風起こしてやりますよ!」

サッカー初心者やのに、大口をたたいてしまった俺は、せめて試合時間常に走り回れる体力だけはつけておこうと思い、真剣にランニングを始めた。

今までは毎日仕事終わりに、家の周りの小学校を3分ほど走っていたが、あれはランニングではない。

夜道で歌を叫びながら走っているただの不審者なんだ。

真っ暗な小学校だが、いつも職員室は明かりがついている。
俺が毎日定時にそっこー帰る中、あの人は必死に働いてんだろうな。

ちなみに、俺のサッカースキルは、
ウイイレでいうと、×ボタンおしっぱなし。

とにかく相手にプレス!!!

「うおぉー」と叫びながら迫るスタイルで小学校時代から、ブイブイいわしてきた。

そんなプレスに磨きをかけるために、休日もランニングだ。

外用の服に着替えて、家を出るときに親父が俺に言った。
「お前その服なんや。誰にみつけてもらうんや?」

そらこんな服着てたらそう思うだろう。
俺が来ていたのは、白と赤の横縞Tシャツ。

そう、ウォーリーだ。

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ウォーリー服を身に纏い、ひょろ長い体のガリガリが定番のランニングコースを走り始める。

西桜ヶ丘の駅前からコープ、小学校を越えて、桜ヶ丘公園…

だが、いつもと様子がおかしい。高齢化が進み、人口減少真っ只中の神戸の秘境にしては、圧倒的に人が多いのだ。

歩道橋を渡るときにその理由がわかった。
今日は、桜ヶ丘公園できたきた祭りがあるのだ。

この祭りにはいくつかの思い出がある。

少年野球時代、この祭りがあるとグランドが使えなくなるので練習が中止になる。そして、みんなで祭りに参加するのだ。
毎週練習しているグラウンドが祭り会場に変わり、屋台で敷き詰められられた光景は新鮮だった。

俺はいつもよくわからないヨーヨーを高額で買ってしまい、笑顔で持ち帰っていたものだ。

今でもそれは部屋にあり、たまにそれをみては、なんてこんな無駄なものが欲しかったのかと思ったりもする。

けど、無駄なものなんてこの世にないわけで、これを買ったことも俺にとっては大切な思い出なんだ。

祭り会場となったときの雰囲気の違う桜ヶ丘公園が俺は大好きだった。
1番印象に残っている祭りでの出来事は、ある部員が爆竹を作って、それを爆発させて、コーチがすさまじく怒ったことか。


そんな思い出を思い出しながら俺は、祭り会場となっている公園の中を駆けた。

駆けるといっても時速8㎞くらいなわけで、ほぼ歩くのと変わらない。

髪型は角刈りだ。これも、小学校のころと変わらない。
散髪屋に行くといつもこう言われる。
「髪型はどうしますか?」

「いつもの」

そういうと角刈りになるんだ。


不思議なことがあるもんだ。こんなんじゃモテねーよ…

ワックスをつけりゃましになるんだけど、俺の性格上ワックスをつけるのがめんどくさい。
もちろん職場に行くときはつけるが、
ランニングに行くのにワックスはつけない。

もちろん角刈りで走る。

祭り会場の少し端のあたりを走っているときだろうか、目の前に幼馴染の女子の姿が飛び込んできた。
あっと思った俺は、走るのをやめて、歩きはじめる。

幼馴染の隣には、がっしりとしたやんちゃ系の男がいた、たぶん彼氏だろう。
情けねぇことに、俺は彼氏の精悍な顔つきをみて、びびってしまった。

彼氏から目をそらして幼馴染の女の子に目を向ける。
そして幼馴染と目があった時、俺の体にセメントが落っこちてきた。カチカチに固まる体...

3か月前、「久しぶり!よかったら飲みに行こうよ!」とLINEしたが、既読無視をされた事実を思い出したのだ。

俺の体は、無意識に回れ右をしていた。
そして、幼馴染とムキムキ彼氏から逃れるかのように、ダッシュで逃げた。

なぜ逃げたかはわからない。体が勝手に動いたのだ。

よくスポーツのプロが「体が勝手に反応した」
というが、俺のはそれではない。

ただ、自分がLINEを既読無視された。
幼馴染の女子と会うのが気まずくてさらに、彼氏のイケイケの威圧感に負けたのだ。

浅倉さんの件に関してもそうだが、自分が負け犬であることをひしひしと痛感した。


悔しい。ただただ悔しかった。

基本、俺の知り合いのそこそこかわいい女の子はみんな彼氏がいる。そしてその彼氏たちはたいていかっけぇ。
浅倉さんの彼氏もそうなんだろう。

そうなると俺は自分の無力さが嫌になる。

「人と比べるな。人に期待するな」
きゃぷてんの言葉が脳裏を掠めたとき、俺の心は少し救われた。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告


来週、
7月7日金曜日からは、俺バグ高校生編、Ⅳ章再開です!!





-俺バグ延長戦-
作者が弾き語るエンディングテーマ

 「ふがいないや」 YUKI 



俺バグ延長戦8

2017. 08. 04  
俺バグ延長戦Ⅲ章

←延長戦6話へ | 




深夜12時頃、俺は一人さいたまに住むボブに電話をした。
「もう寝てる?」

「起きてるから電話出てる。寝る直前や」

「すまん、ちょいと聞いてくれっか。めっちゃ狙ってた同期の蛍子ちゃんにさ。彼氏いたわ」

「そうか」

「おう」

「次は、誰行くん?」

「はやいな」

「彼氏おったんならもう無理やろ」

「まあたしかにひきづったところでどうもならんからな
次はなあ、ランチ屋のお姉さんや」

「そのお姉さんどんな人なん?」

「めっちゃ美人やぞ。もう振られたけどな」

「は?振られたってどういうことやねん。早すぎやろ」

「お会計の時に、俺の連絡先書いた紙を渡してんけどな、彼氏おるからごめんなさいやって」




5月29日、職場のフットサルが梅田で行われる。
俺は買ったばかりの折り畳み自転車で十三まで電車に乗り、そこから、チャリでコートへ向かう。

一時半集合だが、俺は時間ぎりぎりだった。

「はあ、はあ!絶対遅れたらあかん!」

俺はチャリを漕ぎまくった。
小雨が降る中、カッパを着て、ペダルを漕ぎまくる。

風邪気味の体に鞭打って、進み続けた。

なんとか時間に間に合った俺は、フットサル会場に入り、事務所に顔を出した。

お姉ちゃんが俺に声をかける。

「今日予約されてた、後藤様ですか?」
「はい。あ、他の方は?」

「まだですよ、あなたが一番です。」
「そっすか!」

5分後に、金田がゆっくりのそのそ歩いて来た。

そのあとに、畠山君が来る。
畠山君は、同期だが、採用時期が俺より半年早い。フットサルも何度か来ているらしい。

「畠山君、遅いやん!1時半やで。」

「あー、あの時間は参考程度やで。いけたら凄い的な。」

「なんやねんそれ。」
俺はうちの職場のラフさに憤慨するどころか、安心した。

続々と集まってくる職場のみんな。

人一倍どでかいお体をした方に、俺は挨拶をした。
「武田です。本日はお誘いありがとうございます!」

「おー、来てくれてありがとう!。俺は、後藤。よろしく!」

俺は心で呟く。
「この人が、後藤さん。ダブルブルドーザーの一角か。」

畠山君情報では、
後藤さんと村瀬さんがフォワードへ行くと、ものすごい勢いで点を稼ぐので、
‘ダブルブルドーザー’と言われているらしい。

俺が今日このフットサルに来たのは、
自称アジアの大砲、後藤さんからのお誘いメールを、畠山君から転送してもらったからだ。

アジアの大砲さんのおかげで今、俺はここにいる。
大砲さんありがとう。

他にも、初めて会う方がたくさんいる。

「初めまして。僕、○○課の武田です!」
「こちらこそ!僕は、○○課の深瀬です!」

営業マンのようなトークをし、ロッカールームで着替え始める。

このフットサルコートは、2週間前にできたばかりだそうで、とてもきれいだった。

「ロッカー綺麗!なんかプロみたいやな!」
はしゃぐ俺は、さっと、着替えてコートに出ようとした。

4つの番号が付いたロックキーを`適当に`設定し、ドアを閉め、ロックキーをむちゃくちゃにする。

即座に俺は叫んだ。
「あっ!番号忘れた。鍵開けられへんっ」

「ニワトリかよ!」どこからともなく聞こえる突っ込みの声。

アホなことをしでかし慌てる俺を、畠山君が他の人たちに紹介する。

「彼、武田君は、うちのスーパールーキーですよ。いろんな意味で凄いです。」
褒めてんのかけなしてるのか…笑


俺は、事務所のおっちゃんを呼んで鍵を開けてもらう。
「番号は覚えておきましょうね。」

ぼそっと叱られたがそんなことは無視だ。

「あざっす!」とおっちゃんに礼を言い、コートに駆けだした。

きゃっきゃっきゃ!

目の前には、2歳か3歳くらいの子どもと、アジアの大砲、後藤さんがわちゃわちゃしている。

「かっわいい!!!」
俺は大砲のお子様に夢中になった。

「畠山君!あの子供って`アジアの大砲`さんの子どもやんな?」

「そうやで。」

「っくぅー!俺も(浅倉さんと)結婚してあんなかわいいこどもと遊びてえ!」

俺はフットサルそっちのけで、子供に見とれていた。


今日のフットサルは、来月行われる大会のメンバー選考を兼ねているようだ。

リーダーの堀田係長がビデオカメラを回しながら、僕ら、初参加組に告げる。

「みんな今日は来てくれてありがとう。
来週の大会で、チームを3つくらいにわけるんやけど、今日はそのセレクションや。
張り切ってアピールしてくれ!」

「しゃあっ!ぜってえAチーム(一番強い)に入るぞ!」
張り切る俺に、金田は冷静に告げる。

「武田。俺ら、野球経験者やろ。サッカー素人やし、B,Cチームでがんばろうや。
いや、なんなら、俺、観戦組でもええや。」
金田はやる気なさそうに話したが、イチロー顔負けのストレッチを入念にしている。
本当はAに入りたいんだろう。

「俺テストどーでもいいねん。」と言いながら虎視眈々と勉強するみたいなものだ。


ちなみに俺のサッカーの実力は、皆無だ。
みんなにはこう説明している。

「技術はないんすけど、ボールに迫る意欲はすげえっす!
ウイイレでいうたら常に×ボタン押してプレスする感じっすね!」

そして、チームが分けられた。
今年採用された初参加組、3人と、何回か来ている畠山君、藤堂君たち2人、合計5人がチームだ。

対戦相手は、セレッソ大阪の大人のスクール生。

「スクール生」という響きからして、学生のようだが、大人のという修飾語がついているので、れっきとした大人だ。

どうも俺たちと醸し出す雰囲気が違った。
俺たちは栽培マン、彼らはサイヤ人ほどの差がある。
そんなくだらないことを考えているとあっという間に試合が始まった。

ピィーっというホイッスルと同時にキックオフだ。

ダダダゥ  ガッ カーンシュッザー
戦いは続く。

スクール生は、非常にうまく、俺の技術では歯が立たなかった。

畠山君や、藤堂君など、そこそこ上手い人たちがいるが、スクール生は遥かにうまかった。
3,4ほどたつと、3-0か4-0くらいで負けている。

負けず嫌いの俺はムキ向きになった。
「技術で勝てんなら、気迫や。」

果敢に突っ込み、体をぶつけ、時には、スライディングをする。
熱い野郎がやってきたんだ。

「きみー!フットサルは、接触したらあかんよー!」
アジアの大砲・後藤さんは俺に注意する。

「さあーせん!」
すぐに謝った俺は、作戦を切り替えた。

「相手のうまい選手に張り付いて、パスカットに徹してやる。」

しかし、俺のマークなどたかがしれているので、この行動はすぐ振り切られて終わる。

ピィー!ホイッスルが響き渡り、試合が終わった。

死ぬほど疲れた俺は、コートにぶっ倒れる。
「はあ、はあ、はあ、こんな疲れるっけ、サッカー?」

金田も死にかけていた。
共に、言葉を掛け合い、疲れを癒し合う。


チームが交代し、さっきまで見学していた人たちがコートにでてきたが、そこにはボスもいた。

彼が着てきた服はバルセロナ。背番号は28、ツバサと書いてある。
ドヤ顔で突っ込んでほしそうにしている彼はやはり、生粋のエンターテイナーだ。

彼は今日のフットサルの意気込みについて、
「僕はめっちゃ下手やけど、めっちゃ応援するで!」と言っていた。

ちなみに、畠山君はまた試合に出ている。人数の関係上仕方がないのだ。

彼は小柄だが、ものすごいスタミナを持っていた。
たぶん昨日23時間くらい睡眠をとったのだろう。

そして次の試合が始まった。

前方でウヨウヨするボス。
ボスは絶妙なパスを受けてシュートを放つ。

しかし、気の抜けたよれよれシュート!
俺と同じくらいのサッカー技術なことが即座にわかった。

目を見張るのは、1試合目にビデオを回していたリーダーの堀田係長の大活躍だ。
御年36?らしいが、年齢を感じさせない動き。

顔もカッコいいし、サッカーもうまいし、神はこの世界をやはり不公平に操っている。

そういえば、この試合はだれがビデオを回しているのか確認すると、金田が死んだ魚のような顔でビデオを回していた。安心だ。

とにかくすごいのが、アジアの大砲、後藤さん。

彼が放つシュートは、バッゴーーーンという音がする。
 ドカベンの岩城がグワガラガキィーンと打つのと同じ類だ。

そんな大砲さんに、試合のあと、
「君は8割勢いで2割ガッツやね。 技術とは違う何かを持っている」
と言われたのは嬉しい限りだ。

この試合も終わり、また、チームが入れ替わる。
俺たちの出番だ。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告

今週は俺バグ高校編をお休みして、社会人編の延長戦を掲載しました。
来週は、お盆なので休載します。
再来週の金曜日も延長戦を掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします!




-俺バグ延長戦-
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 「ふがいないや」 YUKI 



俺バグ延長戦8


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2017. 09. 08  
俺バグ延長戦Ⅲ章

←延長戦7話へ | 




サッカーの2試合目に、俺は本領を発揮する。
シュートに向いてないことに気付いたので、パサーに回ったのだ。

サッカー未経験ながら持ち前の運動神経の畠山君に絶妙なスルーパスを繰り出す。

彼は、シャッと反応し華麗にネットを揺らす。

「いぇい!さっすが畠山君!」

「今のパス絶妙やったわ!」
この瞬間が最高だった。こうやって人は生きているのだろう。

そして、その次の3試合目あたりから、俺は自分の生きる道を見つけた。
サッカーが下手でも活躍できるポジション。それはキーパーだ。

しんどすぎて動けないからキーパーをやってみたら、案外楽しかったのだ。
あまり動かなくていいし、セーブしたら、「うおおお」と、会場が湧く。

相手がペナルティエリアに入ってきたら、「気円斬」だか、「マカンコウサッポウ」だか、適当に叫んで相手が力むのを待つ。これが俺の作戦だ。

そして、キーパー以外でももう一つ活躍できることを発見した。

それは、影武者作戦だ。

敵陣地近くで、ボールを持った人に大きく声をかけまくる。
「こっちにパスや!俺が決めたる!」

そのやかましさで、相手ディフェンスを引き寄せるの、相手ディフェンスが俺の方に来れば儲けもの。俺にパスが回ってこないのだから。

しかし、まれにパスをだしてくれる優しい人もいて、そのおかげで2本シュートを決めることができた。

シュートと言っても、ものすごいキックの素振りにしては、靴の端に触れただけのボテボテゴロだが…

そして、約二時間、汗を流してサッカーに打ち込んだ。
こんなに汗だくになったのは久しぶりだが、体を動かすことの爽快さを思い出した。


フットサルが終わったあと、俺はギアルに電話をかけた。
「昨日の予告通り、今から家行くで。」

「おう、今どこおるん?」ギアルは眠そうな声で返答する。

「梅田」

「何してるん?」

「フットサルしてたわ。だから今、汗だくや」

「きんめ~~~」

「きもないわ!スポーツで汗流して何が悪いねん! 」

「運動して努力してる人を否定するわけじゃない。
ただ、汗をかいてる人が気持ち悪いんや、すまん」


「わかった。じゃあ上沢の銭湯で汗を流せばええんやな
とりあえず、ギアルの家付近に着いたらまた連絡する」

40分後。ギアルの住む上沢駅に到着したので、もう一度彼に電話する。
「銭湯おるで。一緒に入ろうや。」

「俺風呂入ったよ」ギアルまさかの返答。

「は?じゃあ、俺、一人で銭湯行くん?」

「そうやで。」

「一緒に入らんの?」

「そうやで」

「なんでやねん!一緒に入ろうぜ!」

「お前ってさ…ホモなん?」

「いや別にホモちゃうけど、一緒に入ってもええやん。」

「入ってもええけど、入らんくてもええやろ?」

結局ギアルは風呂に入ってくれなかったが、俺たちは飲み屋に入った。


「とっしーって、ついに浅倉さん以外の好きな人みつかったんやろ。
よかったなあ」


「せや。蛍子ちゃんっていうんや。彼氏おるけどな」

「その蛍子ちゃんとどう仲良くなっていくん?」

「飲み会で話したり…やな」

「蛍子ちゃんは何飲むん?」

「あの子は、ビール飲むで。俺は、梅酒や」

「けどさ。二人で飲みに行ってそれを注文したら、店員さんは、とっしーにビール置いて
蛍子ちゃんに梅酒をおくやろ?
梅酒はぼくです。って宣言するとき恥ずかしいやん」


「しゃあないやんけ、ビールは苦いから嫌いなんや」

「そういうとこやで。ガキっぽいねん。
だからとっしーは浅倉さんに振られたんや」

浅倉さんのことを言われて俺はムキになる。
「浅倉さんは一途な人が好きって言ってた。俺は一途やったのに振られたやん」

「それはただの逃げや。とっしーがその言葉にすがりたいだけや。
一途って言葉にすがってるお前は、浅倉さんと復縁できるという言い訳を作ってるんや。


お前のことが好きじゃない浅倉さんからしたらそんなん望んでないぞ?
ただのストーカーや」

ギアルの厳しい言葉に俺は、「黙れ!」としか言葉が出ない。
彼は、さらに言葉を連ねる。

「こういう正論地味た言い方は女の子は嫌いやねん。
だからこれはとっしーにしかやらん。
そしたらお前はこの正論にキレる」

「キレるとわかってたらやるなよ!」

「でもやるで。本当のこと言うマンやからな。

とっしーはそもそも女心がわかってないねん。
男は理屈。女の子は感情。
そういうのを知っとかなあかん」

「ほう」俺はギアルの恋愛講座に耳を傾ける。

「キャプテンは、理屈的な笑いや。練り上げてるけど、女性には受けん。
それがわかってるから、あいつは女子と話さん。


それがホモ疑惑を生むわけや。

ボブは生き方が上手い。
空気読めるし俺らの中で1番はよ結婚する。

ここでとっしーや。
キャプテンみたいな理屈で笑い取るタイプでもなく、ボブみたいに狡猾でもない。

こうなったときにお前の生き様は情に訴えるしかない。
恋愛スタンスはすがりつくってことや。


だから、お前は妥協されていけ!」

「そのいき方ださない?」

「ださいけどいけたらええやん」

「ボブの今の彼女との付き合い方を参考にしろよ」

「どんなん?」

「ボブの彼女がボブにもうアタックしてん。ほんで、ボブはまあ、あしらってたけど、
結局まあええかってなって、付き合った。」

「立場的には蛍子ちゃんがボブ、ボブの彼女が俺ってことか。」

「すがりついて、妥協点に入って付き合う。
今から言うグラフをほんまに意識せえよ。


イケル 妥協 無理
妥協のほんまに下でいい。


そんな好きちゃうけど、まあえっかって思われればええねん」

俺の現状を鑑みるに、ギアルのネガティブ恋愛論に納得せざるを得なかった。
そして、その作戦を意識して蛍子ちゃんと接する機会がやってきた。


5月29日、勤務が終わった。
俺はコップを洗いに洗面台のある部屋へ行った。

そこで洗い始めた瞬間、蛍子ちゃんがやってきた。

正直、ここでのエンカウントを希望してこの時間にコップを洗いに来たのだがいざ現れるとさらに緊張する。
足の震えを隠して、話しかける。

「仕事終わったん?お疲れー」

「うん終わったよ、お疲れー」

「1日疲れた?」

「いや、疲れてない...」

はにかむ彼女に俺はときめく。


「蛍子ちゃんさ?自己紹介のとき
'でございます'って言ってなかった?」

「え?そんなん覚えてないで!」

「ピスタチオか、サザエさんかとおもたわ!
'ございますっ'」


俺はモノマネをして蛍子ちゃんをからかった。
好きすぎてからかうなんて小5か。

すると、梅津さんがやってくる。
梅津さんは蛍子ちゃんと同じ課の先輩だ。

「蛍子ちゃんが見たことない感じでめっちゃ笑ってる!あ、やっぱり武田くんや」
梅津さんは蛍子ちゃんをみてそう言った。

俺はただただ喜ぶ。
蛍子ちゃんを笑わせたい一心でいつも話すネタを考えているのだ。

コップを洗い終わり、戻ろうとする俺と蛍子ちゃん。
「蛍子ちゃんもう帰るん?」

一緒に帰ろう!と言いたかったが言葉が出ず、一度、自分の課に戻る。

蛍子ちゃんとは別の課なので、タイミングを計る。
...どのタイミングで帰ったら蛍子ちゃんとエレベーターで鉢合わせれるかな?

まあ変態だ。

そんなことを考えていたおかげで、エレベーターでちょうど蛍子ちゃんと鉢合わせた。

蛍子ちゃんは俺を見かけるとにっこり微笑んでくれる。それが今の俺の生きがいだ。

エレベーターで2人きりになったりしたらドキドキが止まらないのだが、他の社員たちも大勢いる。

エレベーターから降り、俺は言葉を発した。
「蛍子ちゃんのことをさ。'アンチエイジング蛍子'って呼んでいい?」

「え?!な、なんで??」

戸惑う蛍子ちゃんに俺は語りだす。

「俺さ、ご存知の通り蛍子ちゃんに惚れてもてるやん?」

ふふふ、と笑う蛍子ちゃん。


「こんなマジ惚れしてまう恋のときめきは7年ぶりやねん。
年をとるほど大人になっていくけどさ。俺はいつまでもわくわくときめきたい。


蛍子ちゃんに出会えてから心が若返ってん。
だから、蛍子ちゃんのことを「アンチエイジング蛍子」「AK」って呼んでいい?」

こんなこと話したら普通にドン引きされるだろう。しかし、俺はありのままの思いを吐き出した。

「AK?なんか変やけど別にいいよ。」

微笑んで了承してくれる蛍子ちゃん。
俺は畳み掛けるように、恥ずかしい事実を暴露した。

「あとさ、隠したくないから言うけどさ、勝手にこんなことしてるねん。」

俺はどん引きされる覚悟で、ギアルに将棋で勝てば蛍子ちゃんとつきあえるという謎の賭けをしていることを話した。


「えっ?全然ええで。」
驚きながらも屈託のない笑顔で笑ってくれた。

本来俺は、梅田方面に乗るのだが、反対方向の中央線に乗った。
「あれ?武田くんっ、電車間違えてるんちゃう?」

蛍子ちゃんに言われるが、「大丈夫、大丈夫」とごまかす。
君と話したいから、なんて恥ずかしくて言えない。

恥ずかしさをごまかすために、俺は彼女に「ズボンの柄COWCOWみたいやな」と茶化した。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告

来週は、延長戦を掲載します!
9月15日 9話 フリーターやのに早起きやな

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俺バグ延長戦8

2017. 09. 15  
俺バグ延長戦Ⅲ章




2016.6.2
業務が終わったあと、蛍子ちゃんの課に顔を出し、声をかける。

「蛍子ちゃん。昨日言ってた漫画持ってきたわ。」

「ありがとう」

「仕事もう終わり?」

「うん!」

「一緒に帰ろうや!」

「おっけー」

…え?おっけーなん?
あまりにすんなり承諾してくれたので、俺は心で驚いた。

「じゃあ外でまっとくわ。」

そう言い部屋を出た俺は、廊下で蛍子ちゃんを待つ。
掲示板のポスターを見ているが内容は頭に入ってこない。

目を瞑り、耳を澄ませる。

蛍子ちゃんまだかな?

カッカッカッ

これは、違う、男の足音や。眼を開くと、叔父さん社員がいた。

蛍子ちゃんまだかな。もう一度目を瞑る。

カンカンカンッ

甲高いハイヒールの音…
きたっ!

すぐに振り向きたかったが振り向かない。

蛍子ちゃんは俺に声をかける。「おまたせ」

俺はキザなキャラを演じ、調子に乗ってしまう。「おう!帰ろっか!」

共にエレベーターへ入る俺と蛍子ちゃん。
エレベーターが閉まる間際に、部長も入ってきた。
部長とは、とてもとても偉いお方だ。

俺の心臓はバクバクしているが、それはこの密室で蛍子ちゃんと共にいるからなのか、部長の威圧感なのかはわからない。

蛍子ちゃんは、本来俺とは反対方向の電車だが、今日は友達と飲み会らしく俺と同じ方向の電車に乗った。

蛍子ちゃんの高校時代や中学時代の部活のことを聞く俺。
なんと彼女はテニス部のようだ。

俺はさりげに「また今度テニスしようよ」と言った。

「いいよ。久しぶりやからできるかなあ」
蛍子ちゃんとテニス、想像しただけでもう楽しいからおなかいっぱいだ。

あっという間に梅田に着く。
1人で電車に乗る時の3倍速だ。赤い彗星め

蛍子ちゃんと並んで歩くだけで心がうきうきになる俺。

「蛍子ちゃん、飲み会どこで集合なん?」

「大阪駅やねん。」

「俺も行くわ。」

「え?武田君、阪急なんちゃうん?JR遠いし…」

俺にとっては、遠いとかどうでもよかった。
ただ、蛍子ちゃんともっと話していたかった。

こんなこと言うのは気持ちわりぃと思ったが、俺はストレートに気持ちを伝える。

「もっと、蛍子ちゃんと話したいねん。大阪駅まで行くわ。いい?」

「明日も一緒に帰ればええやん」

蛍子ちゃんは、微笑みながらそう言った。

俺は心が撃ち抜かれた、そこで足が止まった。

「じゃあ。」

そう言い、大阪駅へと歩く蛍子ちゃん。俺をみて笑って手を振ってくれる。
俺はこの時自分がどんな顔をして何を話したかを覚えていない。

ただ、「明日も一緒に帰ればええやん。」という言葉が脳内を駆け巡っていたことはたしかだ。

俺は人生最大級の笑顔で、変なステップをしながら阪急梅田駅へ歩き出す。

1分ぐらいして急に冷静になった。
あの言葉は、俺を振り切るための方便か?

それとも、大阪駅と阪急梅田駅の遠さを見越して俺を気遣ってくれたのか?

どちらか、わからないし、蛍子ちゃんの本心はわからないが、明日も蛍子ちゃんと一緒に帰ろう。誘ってみよう。

明日になればわかることだ。


次の日…

「珍しく忙しいぞ...どうした金曜日?」
社外からのやりとりに追われ、係長からは大量のコピーを依頼されていた。

普段は係長と談笑しながら平和に働く俺だが今日は違う。
必死に業務をこなした。

なぜか?昨日の蛍子ちゃんの言葉が頭から離れないからだ。

「明日も一緒に帰ったらええやん?」
そう、俺は蛍子ちゃんと今日も帰れると期待していた。

必死に業務を終わらした俺は、定時で仕事を終わらせることに成功する。

ちなみに係長は必死で働く俺を横目に、先に帰宅している。
(ああいうラフなとこも好きなんやけど、ちょい悔しい...)

定時に仕事を終えたあと、変な駆け引きをする。
「いつも洗面室で蛍子ちゃんに会うときは、俺の方が早くに居る。

なんでかって俺が定時に上がってすぐ洗面室にいってコップを延々と洗いながら待ってるからだ。
けどこれきもくないか?
蛍子ちゃんをめっちゃ待ってるみたいやん(いやその通りなのだが)」

そこで、俺は自分の仕事が終わってから5分ほど時間潰してから洗面室に向かった。

蛍子ちゃんと出会ったのは、彼女がコップを洗い終え、課に戻るところだった。

「蛍子ちゃんお疲れ!」

「あ、おつかれ」

少しそっけない返事だった。
その時に、「一緒に帰ろう」と言えなかった俺の負けかもしれない。

俺はコップを洗って自分の課に戻ったあと、蛍子ちゃんの課を訪れたが彼女の姿はそこにはなかった。

俺は落胆しつつも先輩に尋ねた。「蛍子ちゃん帰りましたか?」

「帰ったで。」

「え?いつですか?」

「2分前ぐらいかな」

俺は絶望した。
「ほんますか?!それはつらすぎる…」

「どうしたん?」

「今日蛍子ちゃんといっしょに帰りたかったんですけどできませんでした。
ショックなんで、月曜日会社休みますわ」


「え?メンタル弱っ」

この日の俺は憂鬱だった。
蛍子ちゃんと帰れたか帰れないかでこんなにも気持ちが違うのか。

勝手に期待して、勝手にがっかりして、一喜一憂している。
俺はバカだ。


そんなとき、キャプテンの言葉が浮かんだ。
「人に期待するな」


2016.6.8
通勤電車から窓を眺める。丁度、稜北台高校の生徒が登校する姿が見えた。

髪の毛の色、流さ、身長、スカートの丈、全てが浅倉さんにそっくりな女子高生に俺は目を奪われる。

...浅倉さんはどこで何してるんやろな。俺にはそれを知る術もないし、関係のないことか...


疲れ切った月曜日、黄昏に浸る。


30分前、6月始めての月曜日は最も望ましくない形で幕を開けた。

「あんた何時やと思ってるの!?仕事休む気!?」
母の怒声で目が醒める。

寝起きは、好きな女の子に起こしてもらってトーストとおしゃれなハムエッグで決めたいなんてものは幻想だ。

起きれないなんて当然だ。目覚まし時計をかけていないからな。

母の怒りが爆発する。
「いい加減にしなさい!毎日毎日遅刻ギリギリに起きて!」

俺はいつも通り対応する。
「俺が遅刻しようが関係ないやろほっといてくれ」

さらにキレる母。「あんた仕事を舐めてるの?」

「舐めるとかじゃない起きれるときは起きるし、起きれんときは遅刻ギリギリ。それだけの話。」

運悪いことに休日出勤の代休で家にいた父までも俺を攻め立てる。

「お前が原因作るから悪いんやろうが!ええ加減にせえよ!」

両親からカチキレされる俺。高校一年生の頃と同じだ。

あの頃もそうだった。
これは俺の新生活特有の現象かもしれない。

大学では起こらなかったが、高校、社会人と、学校、職場での生活が楽しすぎて遊びまくる。

もちろんあまり家にいないし、疲労がたまって朝は起きれない。

金も湯水の如く使いまくり、破綻寸前。
そんな俺に両親は失望し、ガミガミ説教をするが、俺は親に何を言われても気にしていないので、変わらない。

いや、高校の時ならまだ親に叱られて反省する部分はあった。

ただもう社会人なんだ。

「俺の人生は俺が決める。」

遅刻する、職場の信頼がなくなる。

そんなことわかってる。わかってるけど、遅刻はしない。
遅刻ギリギリの時間に合わせて起きるようにしてるからだ。

「ギリギリに行ってたらそういう奴やと態度で見られる」

そんなこともわかってる。

ただもう、自由にさせてくれ。もうなんでもええんや。

このヤケクソ感はまさしく、浅倉さんに振られた後の高校一年生時代の6月と同じだ。
現に今も蛍子ちゃんに振られて、(厳密には振られてはない、彼氏がいるだけ)やってられなくなっている。

大学4年生の最後に、「俺は変わる、成長する」と誓った。

ただ、全然成長していない。高校一年生時代に戻るなんて退化なのか?

違う。
これでいいんだ。

俺は大学時代、人間として堕落した。
成長するためには、もう一度高校時代のバイタリティを取り戻す必要がある。


家での居場所がないからこそ、職場でテンション上がる。

親にキレられたって構わない。そんなことは無視して部屋でギターを掻き鳴らし自分の世界に浸るだけだ。


「俺なんかがさっちゃんと付き合うなんて夢のまた夢か。脈もねーし彼氏おるし、やってらんねーよ...」
俺はそう思い、また負け犬になりつつあった。


そんな追い込まれた日々のある日の朝、ラインをみると41もラインが溜まっていた。
送り主は友人ギアル...

そのメッセージには、俺を奮い立たせる言葉と数々の恋愛論が詰まっていた。



「とっしーが蛍子ちゃんを誘ったスクショみたで。改めて見ると文章の書き方もセンスないなあ
本気で蛍子ちゃんと付き合いたいならもっと周りを見るべきやと思う

努力せずに人を惚れさせるなんて学生までちゃうかなと思いませんか?

それとなぜラインで誘う?
男はラインや電話を連絡手段して使うけど
女はラインや電話をコミュニケーションツールとして使いたがる。

この言葉赤線な。
(俺は赤ペンを取り出し携帯画面に書き込む)


だから蛍子ちゃんにラインをする時は世間話にするべき
しかし今はお前にベクトルが向いてないから頻繁に送りすぎもあかん

毎日、仕事の終わりにサイコロ振って1の目が出た時だけ送るとかやれば例えばやけど

そうやって不規則性を持たせて送るといい。理由は相手から今日ラインくるやろなあとか舐められへんため。サイコロなら実質6分の1やから週一のペースやしな。

仮に二日連続でサイコロの1の目が出たとしてもそれは構わずメールを送れ。何回も言うけど重要なのは不規則性を持たせること。

そして送る文やけど例えば、昼休み話した話題などを引っ張って相手の事を書く。自分のことを書きすぎたらあかん。
そして相手が返信しやすい文章であるかどうかを見返す

?を使うと効果的。でもやりすぎるとしんどくなるので注意。

後は、さっちゃんに返したくなるような見出しにするんや。

25文字表示されるみたいやから。

例文はこれや。

仕事お疲れ!

いつも、蛍子ちゃんって割と遅くまで起きてるタイプなん?
今日ちょっと眠そうやったけどピアノの練習しすぎなんちゃうん?笑
あんまり無理したあかんで〜〜

後は返信きた後、返信する時間も不規則性を持たせる。

時間感覚は充分開けるべき。むしろ既読無視する勢いでもいいと思う。仕事場で毎日顔を合わせる以上、相手にストレスがない程度にするのがいいと思う

最後に、俺はお前だけの本当のこと言うマンだ。
No.1じゃない。Only1だ。


検討を祈る。アディオス!



俺は、ギアルのマジすぎるアドバイスを画面に食い入るように読んでいた。

このラインが送られた時間は朝6時40分。

俺は思った。
「あいつフリーターやのに早起きやな」

ギアルの激励に感謝し、俺は気持ち新たに蛍子ちゃんにアタックすることを誓った。

まあ、無理やけどな。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告

来週は俺バグ、
高校生編を掲載いたします!!!






-俺バグ延長戦-
作者が弾き語るエンディングテーマ

 「ふがいないや」 YUKI 


俺バグ 文末 乞うご期待 (1)
2017. 10. 13  
俺バグ延長戦Ⅲ章




梅雨真っ只中の6月の休日、フットサルを終えた帰路で語り合っていた。

俺は高卒の同期、大ちゃんに尋ねる。

「大ちゃんの課に美人さんおるやん?
その彼氏がかっこいいんやろ?どんなやつなん?」

「イケメンで、雰囲気落ち着いてて、カッコいいです!」

「ほらでたよ?美男美女が付き合うこの世界。
俺みてーなピエロは土俵にさえ上がれねぇ負け犬か!」

ヤケになる俺に、大ちゃんは励ましの言葉をかける。
「武田さん、大丈夫です。面白さだけは勝ってますよ!」

「面白さだけかい!」突っ込む畠山くん。

「多少面白かったって、意中の子の心さえ奪えねぇようじゃ意味ねぇよ。」
俺はまたヤケになった。

そんな俺に畠山くんは語りかけた。
「てか武田くん、秋本さん(蛍子ちゃん)にアタックしすぎちゃう?彼氏おるんやで?」

「でもさ?
彼氏おるから諦めるっていうのは、ゴールキーパーおるからシュート打たん。

っていうてるようなものやろ?そんなんでええんか?
俺らついさっきキーパーに向かってガンガンシュート打っていったやん!」

「説得力あること言われても...まあ挑むくらいはええんちゃう?」

畠山くんはたじろぎながら答える。
内心、こいつ何言うてるねんと思っているのだろう。

俺は急に真面目なことを話し出した。

「けどさ、この世界不公平やと思わんか?
生まれた時から人生の難易度が違いすぎる。

途上国に生まれるか先進国に生まれるか、教育環境が与えられるか否か?

先進国の中でも、生まれながらの金持ちや、家庭環境の劣悪さとか差がありすぎるねん。

俺は恵まれてる方やけど、恋愛に関してだけは上手くいかねーよ。

けど、そんな俺を癒してくれるのが、

back number!!」

「僕もバックナンバー好きです!」
大ちゃんのカミングアウトに嬉しくなり、彼とハイタッチを交わす。

「バックナンバーはさ。等身大の俺たちの気持ちを代弁してくれる。」

「ほんとそうですよね!高嶺の花子さんとか共感しまくりで!」

「そうやねん!世の中に恋愛の歌はゴマンとあるけど、
あんな自信なさげやったり、歌詞の中で妄想膨らましてノリツッコミするのはない!」

「そこがバックナンバーのいいとこなんすよね!」

俺と大ちゃんはバックナンバーを崇拝しまくった。
そうこう話しているうちに、駅とは反対方向に歩いていることに気づいた。

「バックナンバーに夢中になって変な方向歩いてもたな。これ、バックナンバーのせいちゃう?」

「バックナンバーは悪くないっすよ。」

「そうやな。バックナンバーに熱くなって何も考えずに歩いた俺らが悪い。」

元来た道を戻り、駅の方向へ歩き、腹ごしらえにやよい軒へ入った。

俺は、バックナンバーのあたりから恋愛のことしか頭にない。

「みなさん、恋とかしてるんすか?」俺は切り出した。
敬語を使う理由は5人中1人先輩がいるからだ。

「いや、してない」
「僕もしてない。」
「俺も」

現在進行形で恋をしているのは、5人中、俺と大ちゃんだけだっだ。

「みんな職場恋愛とかは考えないんすか?」

「職場な、リスキーやろ...」
草食系男子筆頭の畠山くんは、そう言ったあと俺に尋ねる。

「武田くん、恋愛上手くいかんとき、どうやって立ち直るん??」

「そんなん、バックナンバーを聞くしかないやん」

「あぁー、俺もバックナンバー聞きまくりたくなってきた」
大ちゃんもバックナンバー症候群にさいなまれる。

「バックナンバーに乾杯!」
俺はそう叫び水のグラスで大ちゃんと乾杯しまるでビールをぐびるように水を飲んだ。

「ちょっそれ僕のコップやで!」畠山くんが静止するが無視だ。

おれは続けて不満を吐露する。
「俺なんて普段、ちょけてるけど内心やってらんねぇよ。半Dやしな。」

半Dってのは...
自分で説明しといて情けなくなり意気消沈する俺に畠山くんは暖かな目で語りかける。

「けど、武田くんにはあの人らがおるやん?」

俺の心にあの3人組が浮かび上がった。

「バックナンバーや!」



「16時半阪急マクド前よろしくお願いします。」

15時50分、集合時間の40分前に念を押すようにある人からラインが来ました。

「なんやこの人。こえーな。」

僕は他人事のように呟きます。


今から僕が会おうとしてる人は、ネットで知り合ったよくわからん女性です。

3日前このよくわからない人から「会えますか?」と、言われたのです。

これは絶対怪しい。

サクラでその場に現れないか?

コワモテおっさんが現れてボコボコにされてカツアゲされるか?

もしくはボッタクリバーに連れてかれて半泣きにされるか?


とにかく、これは絶対おかしい。

後輩や友人にこのことを相談すると「それまじで怖いやつ。逃げたほうがいい」と口を揃えていいます。

そんなことは僕もわかっていましたが、ここ2年ほど自暴自棄に陥っている僕は、怖いもの見たさというかスリルを求めてこのわけわからん誘いに乗りました。


「さあ、このイベントどうなるのかな?」

と思いつつ、集合場所へ向かいました。

「着きました。青のボーダーの服が僕です。」

そう、相手に送信して、マクドの前で突っ立つ僕。

しかし、待てど待てどそれらしい人は来ず、まちぼうけ。

そんなとき、キョロキョロと辺りを見渡していると、俺と同じようにキョロキョロと辺りを見渡している人がいました。

この人かもしれない...

小さな一重まぶたを大きく見開いたその瞳の先には、

野村克也監督の嫁はんサッチーのようなおばあちゃんがいました。

ピタッッッ!

おばあちゃんと目が合いました。


まさか?この人か?

写真は美人やったのに詐欺りすぎやろ!?

そこじゃない!

こんなおばあちゃんが、ネットで出会い求めてるわけがねぇっ!


おばあちゃんは、僕の目を見てニッコリ微笑むと

「阪神百貨店へはどの方向に進むの?」

と質問してきたのです。
この人じゃなかった安心感に包まれた僕は、いつもの3倍丁寧におばあさんに道を教えました。

おばあさんを見送ると、またまちぼうけ。

僕の前を、カップルたちが、何組も何組も通りすぎて行きます。

`…リア充爆発しろぅ` 妬みに満ちた赤い文字が僕の脳内で点滅しました。

「あっかん、俺何してんねん!?」

心臓を搔きむしるような焦りを感じた僕は、もう一度連絡をとります。

「どこにいますか?」

しかし、返事はありません。

僕は、「帰ります」というメッセージを残し、なんとなく府に落ちないような気持ちを抱いたまま梅田を後にしました。


シャワー浴びて、ワックスガチガチにして、1軍級のまだかっこよさげな服を着て。

ものすごく構えていたのに、結局、騙されただけという肩すかしを喰らったような気持ちで眉毛をへこませる青年。

「俺、ほんまに何してるねん...」


拳で自分の頬をペしっと引っぱたき帰路に着きました。

TO BE CONTINUED 次回もおぶあかした




次回予告

延 Ⅲ章 11話 なんでこんな暑い日にテニスするんやろな

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プロフィール

神戸のルパン

Author:神戸のルパン
このブログでは小説を連載したり、
日々気になったことを記事にしています!

小説のタイトルは、「俺たちバグジー親衛隊」
楽しく生きよう!と思える、明るい作品です!
会話が多く、気軽に読める作品で、毎週金曜日に1話ずつ更新します。

1話完結が基本なので、何話からでも読み始めることができます!

<あらすじ>
 毎日をバカらしく生きた高校生のドタバタ日常ほんわかラブコメディ!
電車で謎のおっさんに殴られる。旅館の浴場に温泉の素を投入。迷子の末、線路を爆走…
  主人公は高校デビューを決意した、冴えない高1とっしー。親衛隊(友人たち)の助言を得て、様々なおバカ活動により垢抜けていく。
 浅倉さん、謎の美女レベッカとの出会いはさらなる波乱を生み…!
 次々と起こる謎イベントや、とっしーの恋のゆくえ!果たして物語はどう転ぶのか?
 読むと「っふぅほわっ」とした気分になり、人生が楽しくなる!?
 現代日本に送る「愉快痛快日常コメディ」

 ぜひ一読してみてください!

また金曜日には稀に、俺たちバグジー親衛隊の続編「俺バグ延長戦」を更新しています。こちらは、社会人となった主人公とっしーが、何を考えどう生きたかが描かれています。おなじみ、親衛隊メンバーとのおバカな掛け合いは健在ですが、高校生編よりも真剣な展開が多いです。

金曜日の「俺たちバグジー親衛隊」がみなさんの週末に欠かせないものとなり、
「今週もよく頑張った!また明日から頑張っていこう!」
 と思え、読んだ人々の心が軽くなって笑顔になる作品を執筆していきます!

 物書きとしては初心者で、稚拙な表現も多々あります。
 感想や指摘点はコメント欄でどんどん教えてほしいと思っています!
 物語の完結まで、一生懸命執筆しますので、応援よろしくお願いします!

また、他にも音楽や、サブカルチャー、社会問題への提言など幅広い話題の記事をアップしています。よろしくお願いいたします!
 夢は、書籍化→映画化!!!
日本列島に「俺バグ旋風」を巻き起こします!!!

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やぎぬま るい (@hishintai08)

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